投票する右翼・国民戦線(FN)のルペン党首=23日午前11時1分、フランス北部エナンボモン、杉本康弘撮影
4候補による混戦となったフランス大統領選の第1回投票が23日始まった。午後8時(日本時間24日午前3時)までに締め切られ、深夜(同24日午前)には大勢が判明する見通しだ。過半数を得る候補がいなければ、上位2氏が5月7日の決選投票に進む。
候補者の横顔 エマニュエル・マクロン
候補者の横顔 マリーヌ・ルペン
候補者の横顔 フランソワ・フィヨン
候補者の横顔 ジャンリュック・メランション
特集:2017試練の欧州
大統領選には11人が立候補。長く政権を担ってきた左右二大政党が振るわず、異例の選挙戦となった。
世論調査では、欧州連合(EU)離脱を問う国民投票を公約に掲げる右翼・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(48)の決選投票進出が有力視されてきた。猛追する左翼ジャンリュック・メランション欧州議会議員(65)もEUとの関係見直しを掲げており、決選投票の顔ぶれによってはEUに大きな打撃となる。
有権者は国外在住の約130万人を含む約4700万人。2015年11月のパリ同時多発テロ直後から続く非常事態宣言下で、警察官ら5万人、兵士7千人による厳戒態勢が敷かれた。投票日直前の20日にはパリで警官銃撃事件が起きており、投票所入り口に重装備の警官が立つなど緊迫した雰囲気に包まれた。
ルペン、メランションの両氏と、「右でも左でもない」とするエマニュエル・マクロン前経済相(39)、最大野党・共和党のフランソワ・フィヨン元首相(63)の主要4候補は23日午前に投票を終えた。
ルペン氏は地盤である仏北部エナンボモンで投票。世界中から集った報道陣に向かい、満面の笑みで「一票を投じました」と話した。地元の元ヨーグルト工場従業員エリアーヌ・デルクロワさん(65)は「テロや暴力が怖い。命を守ってくれるのはマリーヌ(ルペン氏)しかいない」と話した。一方、食堂経営のマリーフランソワーズ・ゴンザレスさん(59)はメランション氏に投票した。「行き場のない不満を持つのは私も同じ」とする一方、フランスの理念「自由・平等・友愛」をあげ、「従来の政権は『平等』をないがしろにし、非常事態宣言で『自由』もあやしくなった。マリーヌが勝ったら『友愛』も崩れかねない」と話した。パリでマクロン氏に投票したという美術商ステファン・ミショウさん(52)は「納得して投票したわけではない。最悪を回避するための選択だ」と話した。(パリ=津阪直樹、エナンボモン=稲田信司)