天皇陛下の退位を実現する特例法案の骨子をめぐる自民、公明、民進各党の水面下での攻防は、衆参両院の正副議長の「とりまとめ」に沿う形で決着した。
自民の茂木敏充政調会長は17日、民進の馬淵澄夫・党皇位検討委員会事務局長に骨子案の原案を示した。法案名に「陛下」が加わっていたほか、特例法の第1条となる「退位に至る事情」の文言、皇室典範の付則の書きぶりなど、「とりまとめ」の主要部分を変更する内容だった。しかし、茂木氏は同時に、法案名に「陛下」を加える点以外は修正する意向を示した。
茂木氏が21日、公明の北側一雄副代表も加えた3者協議で示した修正案は、「とりまとめ」に沿って直されていたが、「陛下」は残ったまま。退位を「一代限り」としたい首相官邸側の意向がにじんでいた。
元々、退位を「一代限り」と明確に位置付けることにこだわっていたのは安倍晋三首相だった。2月に自民の高村正彦副総裁と会談した際も、首相は「私の周りでは、今回の退位が例外であることを際立たせるために『今上天皇』とする意見が強い」と述べ、「天皇」ではなく、「今上天皇」との表現を使うことを希望。高村氏が「退位の先例化が理解されやすいよう、『今上』を抜いた方がいい」と説得し、最終的に「天皇」になった経緯がある。民進幹部は「首相側の巻き返しだ」と反発した。
最後は正副議長が間に入り、法案名も修正された。今村雅弘・前復興相の辞任劇で国会が混乱する中、特例法案は円満に提出され、成立する見通しになった。(二階堂友紀)