東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県東松島市立野蒜(のびる)小学校の女子児童(当時9)と住民女性(当時86)の遺族が市に計約4千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、仙台高裁であった。古久保正人裁判長は児童について学校側の過失を認め、市に約2660万円の支払いを命じた一審・仙台地裁判決を支持した。
一方、避難した学校の体育館で津波にのまれて死亡した住民女性については、一審と同様に請求を退けた。
一審判決によると、児童は地震発生後、指定避難所だった学校の体育館に避難。校長が子どもたちを保護者らに引き渡すよう指示し、引き取りを申し出た同級生の父に担任教諭が児童を引き渡した。児童は、海から約700メートルの自宅に戻り死亡した。
一審判決は、自宅に戻るためには浸水想定区域を通らなければならず、校長は津波被災を予見できたのに、保護者以外に引き渡した過失があると認定。遺族への賠償を市に命じた。
一方、住民女性については、体育館が浸水想定区域外だったことから、校長が津波を予見することはできなかったとして、遺族の請求を棄却していた。(桑原紀彦)