厚生労働省は、高齢のがん患者向けの治療指針づくりにのりだす。高齢者への抗がん剤治療の効果についてのデータは少なかったが、今夏にまとめる第3期がん対策推進基本計画に、高齢者の治療法研究を盛り込む。延命や生活の質といった多様な観点から大規模な患者調査をする方針。同省は今後、高齢者のがん治療のあり方について議論する。
抗がん剤はがん治療に効果があるが、吐き気や痛みといった副作用を伴うことが多い。ほかの病気を抱えることが多い高齢患者の場合、抗がん剤の効果がはっきりしない面もある。また、高価な抗がん剤の使用は医療費を押し上げているという指摘もある。
国立がん研究センターは27日、2007~08年に同センターを受診した患者について、抗がん剤を使って生存期間に差が出るかを比べた調査結果を公表した。末期の肺がんでは75歳未満は抗がん剤治療をした人としなかった人で延命効果に差が出たが、75歳以上では大きな差はなかった。
ただ、分析できた75歳以上の症例数が19人と少ないため、「科学的な評価は困難」(厚労省)という。同センターは、今回の調査からは「臨床的、統計的に意味のある結果を得ることができなかった」としている。厚労省は全国がん登録などを活用し、大規模調査を進める。認知症のがん患者の意思決定を支援する仕組み作りも検討している。(黒田壮吉)