石巻北の田部辰昇君=仙台市民
宮城大会5日目の18日は、2球場で2回戦6試合があり、春の宮城県大会に出場した仙台商、白石が初戦を突破した。泉松陵は接戦を制し、泉館山、白石工、仙台工はコールド勝ち。19日には2回戦の残り4試合があり、参加67チームがすべて初戦を終える。
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(18日、高校野球宮城大会 仙台工13―3宮城水産・石巻北)
眼鏡を上げ、ヘルメットのつばを押さえると、石巻北の田部辰昇君(3年)はバットを握る手に力を込めた。三回表1死一塁。遊撃へのゴロは二塁から一塁へ。一塁へ頭から飛び込んだが、間に合わなかった。
入学後、先輩4人が復活させた野球部に同級生2人と入った。だが夏の大会後に全員やめていった。「自分も」と迷うと、当時監督の阿部輝昭部長は「諦めなければいいことあっから」と引き留めてくれた。練習は監督と2人きり。勧誘チラシをマネジャーと配ったが、誰も入らなかった。
それでもやめなかったのは憧れの人ができたから。おかわり君こと西武ライオンズの中村剛也選手。スマホの動画を見て「こんなに軽く振ってもホームランが打てるんだ」と驚いた。
それからとにかくバットを振った。「おかわり君」と名付けた打撃マシンで打ち続け、マネジャーや監督にトスをあげてもらった。当たりもしなかったボールは、2年生の春には内野の頭を越えた。4月には初めて三塁打を打てた。
三回の左翼手の守備で目測を誤り、ベンチに下がった。「判断を間違った。最後まで出たかった」。それでも、コールド負けに涙はなかった。「諦めなければ、どこかで結果が出る」と学んだからだ。
2年半に6校と連合を組んだ。初戦を突破した本吉響には励まされ、負けた涌谷の分も勝とうと意気込んだ。最後は宮城水産。一緒に過ごした彼らのおかげで前を向くことを学べた。
「おかわり君にも、一歩だけなら近づけたかな」。そう笑った。(窪小谷菜月)