シュートを放つA東京の田中(右)
「A東京で始まってA東京で終われれば、一番いいシナリオ」。若きエースの田中大貴(25)はBリーグのチャンピオンシップ(CS)が始まる直前、そう話していた。だが、川崎と対戦した20日の準決勝(2戦先勝制)で第3戦までもつれた末に敗れた。昨年9月、東京・代々木競技場で行われた開幕戦の舞台に立った田中のBリーグ最初のシーズンが終わった。
20日の第2戦は残り12秒で逆転勝ち。1勝1敗とし、前後半5分ずつの第3戦に臨んだ。田中は開始10秒で3点シュート、6秒後にもジャンプシュートを決めるなど、チームに勢いをつけた。しかし、3点リードで始まった後半、川崎に試合の流れを奪われた。田中は「勝負どころで川崎は決めるべき選手が決めてきた。向こうの方が一枚上手だった」と敗因を語った。
CSの直前、「勝負が分かれる場面では自分が責任をもってシュートを打ちたい」と話していた。その言葉通り、特に第3戦は果敢にゴールを狙い、10分間でチーム最多の7得点を挙げた。だが、結果はついてこなかった。「もっとレベルアップして、インパクトを与えられるような選手になって帰ってきたい」
昨年9月の開幕戦は9千人超の観客に見守られるなか、床に敷いたLEDビジョンに映し出された輝くコートで行われた。Bリーグの大河正明チェアマンも折に触れて「憎たらしいほど強くなってほしい」と口にするなど、A東京はリーグを代表するチームとしての立場を求められてきた。中でも田中はチームの「顔」。メディアへの露出が急増するなど、変化の大きいシーズンだった。
そんな今季をこう振り返った。「個人的にはすごく成長できたシーズン。バスケット界にとってもすべてが新しい、チャレンジの1年だったと思う。日本のバスケット界の熱がどんどん上がってきているなと実感した」。そして、来季に向けて誓った。「選手としていいパフォーマンスを見せて、よりレベルの高いリーグにしていきたい」(伊木緑)