延び延びになっていたアップル社のスマートフォン新機種「iPhone12」シリーズがついに予約を開始した。ようやくお目見えした新機種だが、多くのアップルファンからは不評で、「ハードウェアのスペックが高くない」、「外観デザインは取り立てて言うほどのことがない」、「バッテリーの駆動時間が心配」などと散々な言われているようだ。「経済日報」が伝えた。
特に不評な点は、この新機種にイヤホンジャックと充電器が付属していないことだ。アップルの説明によれば、世界にはアップルの純正の充電器が20億個出回っているので、今回は充電器を同梱しなかった。このためiPhone12のパッケージは従来品よりさらに小さく、軽く、輸送しやすくなり、二酸化炭素排出量をより削減できた上に、鉱物の採掘や希少な原料の使用を避けることができた。こうした措置によって年間の二酸化炭素排出量を200万トン減らすことが可能だという。
コストを削減して、より収益性の高い充電器やワイヤレスイヤホンなどの新製品を売りたいためであることは明らかだが、表向きは環境保護を理由にする。こうした「はっきり言わず、他のことを言ってごまかす」やり方が多くの消費者の不興を買った。「いっそのこと携帯電話の製造をやめればもっと環境に優しいんじゃない?」、「レストランで料理を注文するのにお皿を持参するみたい。靴を買ったら靴紐がないみたい」といった声が聞こえる。
突っ込みどころだらけだが、それでもさすがにアップルの新機種でよく売れている。予約がスタートすると、大手ECプラットフォームはほぼ数秒で完売し、アップル公式サイトは注文が殺到して一時つながらなくなった。試算によれば、予約初日にシリーズ2機種が200万台売れ、1つ前のモデルの「iPhone11」を大きく上回った。
アップルスマホの人気の背後にはいくつかの原因がある。まず、今回発売されるiPhone12シリーズには5nmプロセスルールで製造されたA14チップが採用され、トランジスタは前モデルより約40%多く、速度はより早く、バッテリーの駆動時間はより長くなり、他社と比べても優れた製品だといえる。現在、アンドロイド陣営の5nmプロセス製造のチップを搭載した端末はまだ途上にあり、その点でもiPhone12はスマホの処理速度に注目するユーザーをより多く引きつけたとみられる。次に、アップルの新機種には新たに開発した有機EL(OLED)ティスプレイパネルが搭載され、輝度と耐衝撃性はこれまでの数モデルに比べて大幅に向上した。アップルの手の中にはまだいいカードが何枚かあるが、今の市場ではこの2枚を出せばそれで十分だ。最後の歯磨き粉を絞り出すようなわずかなバージョンアップは多くのアップルファンを失望させたが、企業の市場戦略という観点でみれば、少ない投資で多くのリターンを得るのが王道であり、アップルがこの道に長けていることは明らかだ。
チップに力を入れただけでなく、単一の機種で天下を取ったアップルは細分化された市場にも手を打った。たとえばこれから発売される「iPhone12 Pro Max」は、動画の撮影・処理機能を強化してプロのニーズに応える。5.4インチモデルの「iPhone12 mini」は、重量133グラム、厚さ7.4ミリと現在の市場で最もコンパクトな5Gスマホで、既存の大勢のアップルユーザーの買い換えニーズに応えるだけでなく、コンパクトな端末を好む消費者にも人気が出そうだ。現在、市場に出回る5Gスマホのディスプレイはどれも6インチ以上あるので、細分化された市場の中でアップルにライバルはほとんどいない。
一番いいスマートフォンを作ることが多くのスマホメーカーの飽くなき追求だ。今回発売されるアップルの新機種は大勢のアップルファンにそれほど高く評価されなかったが、アップルのより着実な一面を示している。市場ニーズが細分化し続ける今日、最良の携帯電話とはターゲットとする消費者のニーズに応える携帯のことをいう。こうした観点でみれば、アップルには中国国産ブランドが学ぶべき点がまだまだたくさんあるといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年10月22日