ボールを競り合うヘルタの原口(右)=AFP時事
サッカーの2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会を目指す日本代表で、FW原口元気(26)は不動の左サイドに定着した。アジア最終予選では、4試合連続のゴールを挙げ、体を張った守りでピンチの芽を摘む。攻守に献身的なプレーを築いた礎は、3年前、W杯ブラジル大会のメンバー落選後に渡ったドイツにある。
「チームに愛される選手になる」。今季のドイツ1部開幕前、原口元気は誓った。「そのためにまず、誰よりも走って守備に貢献する。その後に、点を取ることを考える」
右サイドが主戦場のヘルタでは、原口が敵のゴール前に動き出しても、パスはなかなか出てこない。チームの主な攻撃の戦術は、カウンターと長身FWを目掛けたクロスだからだ。それでも原口はピッチを駆け回る。繰り返し前線に顔を出したかと思えば、全速力で守備に戻る。
フル出場すれば、ダッシュの指標となるスプリント回数はチームで一、二を争う。昨年10月のハンブルガーSV戦では38回のスプリント。その節のドイツ1部で2位タイの数字だった。
誰よりも走る、という原口の誓いを聞いたのは、J1浦和のジュニアユースの池田伸康コーチだ。中学生年代で原口を指導し、いまも恩師と慕われる。「あいつは変わった。ピッチ上でどんな存在でありたいか、そのために何が必要か。整理されたのだろう」
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天才ドリブラー。小学生の頃から原口は、地元・埼玉を中心にサッカー関係者に知られていた。スカウトされた浦和の下部組織でも、技術と負けん気の強さは抜きんでていた。ある試合で終盤の15分だけ、「5点取らなかったら次はない」と起用された。すると本当に5得点。同世代ではかなわないゴールへの嗅覚(きゅうかく)があった。
「その分、仲間は自分がいいプレーをするためにいる、としか思っていなかった」と池田コーチ。守備になれば、人任せ。出てきたパスが自分の要求と少しでもずれれば、足を伸ばさなかった。池田コーチが厳しく指摘すると、ときには刃向かい、つかみ合いになった。
17歳で浦和とプロ契約。トッ…