送られてきた制服を確認する国立成育医療研究センターの職員=東京都世田谷区大蔵2丁目
難病の子どもらの治療などを担っている国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)が、いらなくなった高校の制服や参考書を募っている。リユース会社に買い取ってもらい、収益金を治療や研究にあてる。担当者は「病気と闘う子どもの治療に『卒業寄付』で力を貸してほしい」と話す。
国立研究開発法人の同センターはこの春、卒業寄付「グラデュエーション×ドネーション(グラドネ)」を始めた。高校の卒業生から、まだ使える学校指定の制服やかばん、コート、参考書、辞書を寄付してもらう。それらを、制服の費用で悩んだ経験がある3児の母親が立ち上げた全国規模の学生服リユース会社「サンクラッド」(高松市)などに販売。代金を新生児医療や小児医療の研究、治療にあてる。
センターは、重い病気を抱える子どもやリスクの高い出産を控える妊婦らの高度な医療や研究に取り組んでいる。なかでも特に小児医療は、治療を受ける子どもの勉強などのサポートや、精神的なケアにあたる専門職員の配置なども必要で人件費がかかる。
そこで、2014年度から本格的に寄付集めに取り組み、ベッドや車いすなど医療器具の購入や難病の研究費にあててきた。当初は2千万円ほどだった法人からの寄付は16年度に約5千万円に増えたが、個人からの寄付は、16年度も約600万円にとどまった。
スタート時から寄付集めに関わってきた総務部の佐藤徹さん(32)は「近い年代なのに、若い人たちに難病の子どものことがあまり知られていない」と感じていた。個人の寄付金を増やす以上に、「10代の若者に知ってほしい」と、今回の「グラドネ」を企画した。
送られた制服の買い取り価格は数十~数千円に過ぎないが、佐藤さんは「寄付を通じて病気と闘う子どものことを知ってもらえたら、その子どもたちが生きやすい社会になる。この春、高校を卒業した人たちの社会参加の第一歩にしてほしい」という。
グラドネを始めて約2カ月。センターには寄付した女性から「制服は思い出のつまった品だったので、役に立ってうれしい」という電話があったという。佐藤さんは「思いが伝わった」と感じている。
寄付は9月1日まで。制服や参考書などの送料は送り主が負担する。「卒業寄付(グラドネ)」で検索するとセンターの専用サイト(
https://www.ncchd.go.jp/donation/graduate.html
)につながる。問い合わせはセンター寄付事務局(03・3416・0181)へ。(田中志乃)