作物を植える予定の畑に立つ(左から)高野華瑠菜さん、後藤涼さん、沢居恵利さん=北海道帯広市、白井伸洋撮影
農家に嫁いだわけではない。農家に育ったわけでもない。そんな20代の女性3人が、国内屈指の農業地帯、北海道・十勝地方で畑作に挑んでいる。畑の名は「十勝ガールズ農場」。多品種少量生産で、就農1年目の昨年は約1千万円を売り上げた。
先月初め、薄暗い倉庫で、沢居恵利さん(27)、高野華瑠菜(はるな)さん(27)、後藤涼さん(23)がジャガイモの種芋と向き合っていた。植え付けに向け、芽が出始めたこぶし大ほどの種芋をナイフで切り分けていく。視線を落としたまま、宮城県出身の後藤さんが尋ねた。「小学校の遠足、どこに行ってた?」。北海道苫小牧市生まれの高野さんは「公園」。栃木県から来た沢居さんが驚き、「私は動物園だったけど」。何げない会話が地道な作業を和ませる。
3人は農業と無縁の家庭に育った。沢居さんの父は自動車関連会社、後藤さんの父は電機製造会社に勤め、高野さんの実家は運送業を営む。酪農に興味を持った沢居さんと、バイオテクノロジーを学びたかった高野さんが出会ったのは、酪農学園大(北海道江別市)。2人は農家でアルバイトするうち、土から食物を生み出す畑作にひかれた。卒業後の2014年、十勝の新得(しんとく)町にある女性農業者育成・研修施設「新得町立レディースファームスクール」で1年間実習。地域の農家との人脈もでき、「さあ、新規就農」と思ったら壁にぶつかった。
とにかく農地がない。十勝の主…