広島の安部=上田幸一撮影
■スコアの余白 番記者のつぶやき
プロ入り10年目、時の人となった。広島の安部は5月26日の巨人戦で規定打席に達すると、打率3割5分1厘でいきなりセ・リーグの首位打者に立った。
スコアの余白
そんな27歳の内野手にはお決まりのフレーズがある。本拠マツダスタジアムのお立ち台で、自身を変えてくれた一言を叫ぶ。
「覇気で打ちました」
2007年秋の高校生ドラフト1巡目で福岡工大城東高から入団。能力の高さは誰もが認めるが、なかなか芽が出なかった。
いつの間にか同学年の3人に後れをとっていた。同じドラフトで3巡目の丸、そして大卒の菊池、社会人出身の田中が先発に定着した15年には、26試合の出場に終わった。「悔しかったです」。2軍でもがいているときに、東出1軍打撃コーチ(当時は選手兼任の2軍野手コーチ補佐)に言われた。「お前、覇気がねえな」
気持ちを前面に押し出すようになり、成績も付いてきた。25年ぶりにリーグ制覇した昨季は主に三塁手として、自己最多115試合に出場した。今季のキャンプでも、前向きな姿勢は変わらなかった。「練習へ取り組む姿勢を考えている」。球団が新外国人内野手を獲得すれば「かかってこい、ペーニャ」と叫びながら、素振りを繰り返した。
苦手な左投手を克服すれば、さらに怖い選手になる。出遅れた「タナキクマル世代」のドラ1が今、猛烈に巻き返している。(広島担当・吉田純哉)