作業員が受けた内部被曝の検査イメージ
茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで作業員が被曝(ひばく)した事故で、作業員5人の被曝状況を巡り日本原子力研究開発機構は当初、1人の肺から2万2千ベクレルのプルトニウムが検出されたと発表していた。だが、量子科学技術研究開発機構の放射線医学総合研究所の検査で一定量以上は検出されなかった。そして19日、放医研が今度は尿からごく微量が検出されたと発表。何が起きたのか。
被曝5人の尿から微量のプルトニウム 原子力機構事故
事故が起きた6日の夜、作業員らは肺に入ったプルトニウムから放出される微量のエックス線を計測する検査を受けた。だが翌日、放医研で調べると、5人のうち4人の体表面のプルトニウムが完全には取れていなかった。放医研はこれらを取り除いて検査し、「検出せず」とした。原子力機構の検査で高い値が出たのは、体表面に残った放射性物質も含め測定したためとみられる。
当初から懸念されたのは内部被曝だ。体内にとどまったプルトニウムが臓器などにダメージを与え、将来がんになる危険が高まる。体内に定着する前に体外へ排出するため、血液中に入ったプルトニウムの排泄(はいせつ)を促す薬をなるべく早く投与する必要があった。量研機構の明石真言執行役は原子力機構が体表面の放射性物質を取り切れなかったのは治療開始を急いだ面があったとし、「医療を最優先したいと考えたのだろう。過大評価は問題はない」と理解を示す。
一方、肺で不検出だったプルトニウムが尿から検出された。放医研によると、肺の検査で検出できる最少量は、体格などによって個人差があるが5千~1万ベクレル。だが尿の場合は長時間かけて測定することなどで、より少量のプルトニウムでも検出可能だ。肺に入った一部が血液に取り込まれ、尿に排出された可能性がある。放医研は引き続き尿や便の分析を進め、早ければ今月末にも5人が吸い込んだ放射性物質の大まかな量が算出できるという。