ギョウジャニンニク(左)とイヌサフラン(北海道立衛生研究所提供)
毒性がある植物を誤って食べて食中毒になり、死亡するケースが後を絶たない。昨年までの10年で11人が死亡し、今年も1人が亡くなった。専門家は、食用に似た有毒植物の特徴を知り、採らないでと注意を呼びかけている。
厚生労働省などによると、11人のうち6人の原因はイヌサフラン。今年5月に亡くなった80代の女性も、この植物を北海道の富良野保健所管内で口にしたという。薄紫やピンクの花が咲くイヌサフランは有毒成分を含み、食後2~12時間で腹痛や下痢の症状が出る。重症化すると、白血球や血小板が減り、死に至ることもある。
葉の形が似ているため、ギョウジャニンニクと間違われやすい。イヌサフランにはニンニクのようなにおいがない。
死者3人と次に多いのがトリカブト。神経系に作用する毒性成分を含む。食後10~20分で唇や舌がしびれ、次第に手足のしびれや吐き気が起きる。不整脈や呼吸不全を起こす危険もある。ニリンソウと同じ場所に生えることがあり、間違われやすい。ニリンソウは春に白い花が、トリカブトは秋に主に紫の花が咲く。
軽いものも含めて食中毒の報告数が44件179人と最も多いのが、ニラに間違われやすいスイセンだ。食後30分以内で吐き気や嘔吐(おうと)などに襲われることがある。ニラは独特のにおいが葉にあるが、スイセンの葉ににおいはない。
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室の登田美桜(とだみおう)・室長は「最近はスイセンやイヌサフランなど園芸植物による食中毒が多い。同じ家庭菜園で植えて、交じってしまった例もある。一緒に植えず、確実に食用とわかる物以外は食べないほうがいい」と話している。(福地慶太郎)