過激派組織「イスラム国」(IS)が放火し、施設の6割が焼けたイブン・アスィール病院。再開の一方で病棟の修理が続く=12日、イラク北部モスル、仙波理撮影
過激派組織「イスラム国」(IS)が拠点としてきたイラク北部モスルの病院に勤める医師が朝日新聞の取材に応じ、IS支配下の病院の実態を証言した。医師や職員らはISの「病院長」に面従腹背で対応しつつ、患者の治療を続けた。1月の病院の解放後も薬や機器が不足しており、危機は続いている。
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モスル中心部の公立の小児科病院「イブン・アスィール」のナシュワン・アフメド医師(50)が今月12日、取材に応じた。病院は2014年6月から2年半にわたってISが支配下に置いた。アフメド氏は小児白血病の治療が専門で、病院解放後に院長に就任した。
ISは病院を占拠すると、イラク人戦闘員を「病院長」として派遣した。アフメド氏は「人を殺すことは知っていても、医療には全くの無知。しかし、病院長の命令を拒めば『不信心者』として罰せられるので、戦争捕虜のようだった」と振り返る。
IS病院長の主な仕事は、出勤者と勤務表をつきあわせて無断欠勤者を突き止め、IS本部に報告することだった。逃げたと判断すると、財産を没収した。
アフメド氏らは、IS病院長に従順を装いつつ、対抗策を練った。病院長が読めないように書類は英語で書き、高性能の検査機器を盗まれないように「新しい方の装置は壊れている」とうその説明をして、古いタイプの機器に誘導した。
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