東京電力福島第一原発事故をめぐり強制起訴された元同社会長ら3人の初公判で、傍聴券を求めて東京地裁の前に並ぶ人たち=30日午前7時31分、東京都千代田区、小玉重隆撮影
東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久被告(77)ら元同社幹部3人の初公判が30日、東京地裁(永渕健一裁判長)で始まった。3人はいずれも、検察官役の指定弁護士による起訴内容を否認し、無罪を主張した。
放射性物質の飛散により、最大約16万人が避難を強いられた世界最悪レベルの原発事故で、刑事責任を問われるのは3人が初めて。起訴されたのはほかに、いずれも元同社副社長の武黒一郎被告(71)と武藤栄被告(67)。
勝俣元会長は法廷で「重大な事故を引き起こし、周辺地域の皆様、広く社会に大変なご迷惑をおかけしたことを改めておわび申し上げます」と謝罪。その上で、「今回の津波、事故を予見することは当時においては不可能だったと考えております」と述べ、起訴内容を否認した。続いて、武黒元副社長と武藤元副社長もそれぞれ、「事故を予見することは不可能でした」などと否認した。
起訴状は、3人が原発の敷地の高さである10メートルを超える巨大津波に襲われて建屋が浸水し、原子炉を冷やす電源が失われて爆発事故が起きるのを予見できたのに、適切な津波対策を怠ったと指摘。その結果、2011年3月の津波襲来に伴う爆発事故で、近くの病院の患者ら44人に長時間の避難を強いて死亡させ、原発作業員ら13人にけがを負わせたとしている。
この日は午前中の罪状認否の後、指定弁護士が裁判で証明しようとする内容を記した冒頭陳述を午後にかけて読み上げる。弁護側も3人それぞれの主張を行う。
事故を巡っては、福島県民らが東電幹部や政府関係者に対する告訴や告発を検察に提出。検察は2度不起訴処分としたが、市民からなる検察審査会の議決を受け、勝俣元会長ら3人が16年2月に強制起訴された。
09年に強制起訴制度を定めた改正検察審査会法が施行された後、9件目の強制起訴裁判となる。(志村英司)