避難所になっている久喜宮小体育館。冷房がないため、被災者たちは風通しのいい窓際に座り涼を求めていた=10日午前8時36分、福岡県朝倉市、福岡亜純撮影
被災地の学校に、子どもたちの笑顔が戻った。九州北部を襲った豪雨から10日で6日目。休校していた小中学校の一部で授業が再開するなど、徐々に日常生活を取り戻す動きがでてきた。一方、避難所生活が長引く人もおり、疲労の色が濃くなってきている。
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■寝苦しさ増す避難所
被災地では断続的に雨が降り、蒸し暑い日が続く。福岡県朝倉市の避難所10カ所のうち3カ所は学校の体育館で冷房がなく、寝苦しさも増している。
同市杷木久喜宮(はきくぐみや)の久喜宮小学校の体育館では10日朝、約180人が夜を明かした。雨で近くの複数の山肌が崩れる恐れがあるとして、市が9日午後、付近の115世帯316人に避難指示を出した影響で、避難者は一時200人近くに膨らんだ。
同市杷木寒水(そうず)の会社員秦雪江さん(48)は10日朝、「いま一番ほしいのはエアコン」と顔に汗を浮かべていた。「汗ふきシートや扇風機でなんとかしのいでいる。間仕切りもほしいけど、この暑さをなんとかしてほしい」
被災後、自治会では業務用の扇風機を5台購入。農作業小屋で使うものも持ち寄り、体育館では20台ほどの扇風機が動いている。地元企業からは移動式の冷房機2台が届いたが、電源の容量が足りず、体育館の隅で「使用不可」の紙が貼ってあった。
久喜宮地域コミュニティ協議会長の原田榮之助さん(72)は「(9日の)避難指示で人が増え、エアコンのある別の避難所に移るようお願いした。でも山肌の状況が気になる人が多く、ここを離れる人は少なかった」と話す。市は体育館に冷房を設置することや、冷房のある教室に避難所を移すことも検討している。
同県東峰村でも10日午前9時現在、8カ所に313人が避難している。今後、冷房設備がない避難所に冷房を置く方針。(伊藤宏樹、菅原普)
■小中学校、大分で7校再開
約370人が避難所で生活する大分県日田市で10日、豪雨で休校していた11小中学校のうち7校が再開し、子どもたちの元気な声が戻ってきた。ただ、市郊外の4校はまだ再開のめどが立っていないという。
市中心部に近い三和小学校にはこの日朝、児童が元気よく「おはようございます」とあいさつしながら登校してきた。付近の道路が陥没したため、通学路の一部を変えたという。同小の体育館にも60人が避難中だ。
5年生の小林葵子(あこ)さん(10)は豪雨の間、ずっと自宅にいた。「雷が鳴ったり、停電したりとてもこわかった。家族みんなで楽しい話をして過ごした」と振り返った。11小中学校は豪雨の翌6日から休校。5日ぶりの登校に、小林さんは「クラスのみんなに会えてとてもうれしい」と笑顔を見せた。
同市小野の井上英雄さん(37)はこの日、市中心部の避難所から、市内にある勤め先の食品加工会社に出勤した。「戻れるところから日常に戻らないと」と友人から借りた自転車で会社に向かった。
ただ、一緒に避難する小学3年の長女(9)が通う小野小学校は、周辺の土砂崩れで校舎に入れないことから休校したまま。長女は学校に行きたがっているという。井上さんは「友達に会うことが一番気晴らしになる。安全が確認できれば、早く再開してほしい」と話した。
一方、福岡県朝倉市と東峰村の全小中学校は、通学が危険だとして、10日や11日から夏休みに入る。(興野優平、女屋泰之)
■ボランティア、受け入れ開始
福岡県朝倉市では10日朝、災害ボランティアの受け入れが始まった。集まった人たちは作業の説明を受けた後に5人ほどのグループに分かれ、要望のあった家に出向いて、流れ込んだ泥のかき出しなどの作業にあたった。
市内の野球場に設けられたボランティアセンターでは、午前10時までに75人が受け付けを済ませた。
朝倉市に隣接する同県うきは市から駆けつけた土屋慶輔さん(64)は「自宅付近も猛烈な雨が降ったので、ひとごととは思えない。何か手伝いができれば」。うきは市から朝倉市内の看護学校に通う出利葉(いでりは)陽子さん(23)は、豪雨があった5日は帰宅できず、学校近くの友人宅で一夜を過ごした。「力仕事だと思うので、体調管理に気をつけながら頑張りたい」と話した。
同県東峰村は15日からボランティアを受け入れる予定。大分県日田市は8日から受け入れている。(井石栄司、安田桂子)