青酸化合物による連続不審死事件で、殺人罪などに問われた筧(かけひ)千佐子被告(70)=京都府向日市=の裁判員裁判が10日、京都地裁であった。筧被告は夫の勇夫さん(当時75)に青酸化合物を飲ませて殺害したことを認めた。
「青酸飲ませた証拠ない」被告側が無罪主張 連続死事件
最初に弁護側から検察官や裁判官らからの質問への態度を問われ、被告は「黙秘します」と述べた。しかし続いて検察側が「勇夫さんに毒を飲ませて殺したことに間違いないか」と問いかけると「はい」と認めた。「殺害した事実を認めるのか」という質問にも「はい」と答えた。
方法を問われ「毒を飲ませた」と答えた。検察側が特定していない青酸の入手方法について、最初の夫と大阪府内で営んでいたプリント工場の出入り業者から提供されたものを「大事にとっておいた」と述べた。
「お金を手に入れたらどうなると思ったのか」との質問に「借金を返せると思った」と話した。検察側が「勇夫さんに対して、今はどんな気持ちですか」と重ねて尋ねると、被告は「申し訳ない気持ちが50%。あとの半分は彼に対する不信感があり、腹立たしいと思っていた」などと述べた。
一方で被告は、「詳しいことはよく覚えていない」と、認知症による記憶力の低下をたびたび訴えた。
6月26日の初公判では、被告は起訴内容について問われると「すべて弁護士に任せてある」と述べ、弁護側は無罪を主張していた。被告は勇夫さんら男性4人を殺害、あるいは殺害しようとしたとして起訴されており、この日はまず審理が進む勇夫さん事件についてだけ質問が行われている。(安倍龍太郎、足立耕作)