法隆寺献納宝物の「淡茶地白虎文描絵綾天蓋垂飾(うすちゃじびゃっこもんかきえあやてんがいすいしょく)」=東京国立博物館蔵
奈良県斑鳩(いかるが)町の法隆寺が明治時代に皇室に献納した「法隆寺献納宝物(ほうもつ)」の一つで、東京国立博物館(東京都台東区)で保管されてきた絹織物に描かれた白虎(びゃっこ)図が、飛鳥時代後半に制作された可能性の高いことが分かった。絹に描かれた絵画作品としては国内最古とみられる。生き生きとした筆致を残した極彩色の白虎の姿は、東アジアの文化交流の実像を伝えてくれる。
同博物館の三田覚之研究員(日本美術史)が、2010年度からの献納宝物の修理に伴い、詳細に調査して明らかにした。これまで詳しい制作年代は不明だった。
白虎は、古代中国思想の方角の守護神「四神(しじん)」の一つ。東の方角を守る青竜(せいりゅう)に対し、西を守るのが白虎とされ、古代日本もその思想を採り入れてきた。
三田さんによれば、白虎の描かれた絹織物は、仏像などの上に差し掛ける荘厳(しょうごん)具(天蓋〈てんがい〉)に付けられた垂れ飾り「描絵綾天蓋垂飾(かきえあやてんがいすいしょく)」の断片で、縦31センチ、横14・1センチの逆三角形。極めて鋭角な形で、7世紀の天蓋垂飾に特徴的なものという。
描かれた白虎は脚を除き、体の全体を白く塗った上に緑や赤、淡い赤などで細部を塗られていた。頭部は失われたが、体は竜のように身をくねらせる格好だ。
飛鳥時代後半の絵画を代表する…