撮影メモのスケッチ。広島の爆心地周辺で草が生えているシーンを描いた(能勢広さん提供)
被爆まもない広島、長崎の惨状を記録した映画の撮影メモがみつかった。映画は日本人スタッフが撮影を始めたが、途中から米軍の管理下に置かれ、フィルムは没収。「幻の原爆映画」と呼ばれた。撮影メモには、日本人スタッフが映画に込めた思いがのぞく。
特集:核といのちを考える
この映画は「広島・長崎における原子爆弾の影響」。原爆被害を科学的に記録しようと、原爆投下の約1カ月後から広島編と長崎編に分け、荒廃した街並みやけがをした人々の姿、植物の状況などを撮影した。
長崎で米軍に干渉され、委嘱を受ける形で撮影を継続。1946年に完成したが、フィルムは没収されて長く公開されず、日本に返されたのは67年になってからだった。
撮影メモは45年9~10月に広島を撮影したカメラマン鈴木喜代治さん(89年に88歳で死去)が書き残していた。構図や絞り値などを記録し、次の撮影に役立てるもので、孫のカメラマン能勢広さん(48)=相模原市=が2013年、自宅の屋根裏部屋でみつけた。「原爆調査生物植物班メモ 1945・9」と記された封筒の中に、黒い表紙のメモ帳(縦約13センチ、横約6センチ)があった。
記載は、東京で出張を命じられ…