東芝メモリの売却に「日米韓連合」が浮上
東芝の半導体子会社「東芝メモリ」売却の入札に参加する4陣営のうち、経済産業省が主導する「日米連合」と韓国半導体大手SKハイニックスの2陣営が互いに合流する検討に入った。近く2兆円強の買収額を東芝に提示する方向だ。
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15日にも優先交渉先が決まる可能性があったが、土壇場で局面が動いた。決定は来週以降になりそうだ。
関係者によると、買収に向けてつくる特別目的会社(SPC)に両陣営の参加社が各2千億~4千億円を出し、全体の買収額を2兆円強と東芝が求める額に応じた形にする。東芝を含む複数の日本企業、銀行も参加する構想。各国での独禁当局の審査が長引かないよう、東芝メモリと同業のSKハイニックスはSPCに融資する形にする。参加社の一部には、まだ流動的な部分も残るという。
今後、参加各社で資金の拠出を正式決定し、東芝に提案する。政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行は14日に社内の了承を済ませた。東芝は、有力とされる米半導体大手ブロードコム陣営の買収提案と比べる作業に入るとみられる。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の陣営は、中国・台湾への技術流出を警戒する政府がなお難色を示している。
日米連合は資金集めが難航して内部の調整が遅れ、5月19日にあった2次入札で買収金額など正式な条件提示ができなかった。ただ、国内の雇用や技術を守る目的で、日本勢による一定の発言権を確保したい経産省が「いろいろ画策した」(関係者)結果、今回の合流にたどり着いた。
しかし、関係者によると、日米韓連合の提案は、東芝と協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立解消が前提という。WDは国際仲裁裁判所に東芝メモリの売却中止を申し立てている。対立が解消しないと、売却が白紙に戻るなどのリスクがある。提案が実現するかどうかは予断を許さない。
WDは日米連合との合流を目指して関係者と交渉してきたが、日米連合側は「まずは東芝と話し合ってもらう」(関係者)と話す。東芝は28日の株主総会までには優先交渉先を決める考えで、作業を急ぐ。