敵基地攻撃能力をめぐる動きや主な発言
弾道ミサイルなどが発射される前に敵基地をたたく「敵基地攻撃能力」の保有について、安倍晋三首相は6日、「現時点で具体的な検討を行う予定はない」と述べた。しかし、北朝鮮のミサイル能力の向上を背景に、小野寺五典・新防衛相が保有の検討に前向きな姿勢を示しており、来年度にも見直される防衛大綱での扱いが焦点になっている。
小野寺防衛相、「敵基地攻撃能力」保有検討に前向き姿勢
首相は広島市内であった記者会見で報道陣の質問に答えた。北朝鮮による核・ミサイル開発を念頭に「現実をしっかり踏まえながら様々な検討を行うべきだ」としたうえで、「敵基地攻撃能力の保有に向けた具体的な検討を行う予定はありません」と述べた。
2月の国会答弁では、能力を保有する計画はないとしたうえで、むしろ「変化していく情勢において、どのように国民を守っていくかについては、常に検討していく責任が我々にある」と強調していた。今回は内閣支持率が低迷するなか、同じ文言を使いながら、世論を二分しかねないテーマへの発言を抑えた格好だ。
公明党の山口那津男代表は今月6日、「(日本は)国際社会と連携して北朝鮮に弾道ミサイルを廃棄させる運動の中心にいる」と指摘。「攻撃能力をもつことについては、冷静に検討すべきだ」と求めた。
ただ、北朝鮮が核・弾道ミサイル開発に前のめりになるなか、自民党内では発射の前に敵基地を攻撃する具体策を検討すべきだとの考え方が根強い。
党の検討チームは3月、能力保有について検討を始めるよう政府に提言。小野寺氏はチームの座長で、防衛相就任後の今月4日のインタビューで、「提言で示した観点を踏まえ、弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のための検討を進めていきたい」と前向きな姿勢を示している。
敵基地攻撃は個別的自衛権の範囲内で憲法上、認められていると政府は解釈するが、実際に能力を備えるには、膨大な費用がかかり、周辺国から警戒も招く。憲法違反となる先制攻撃との線引きも難しい。政府として検討に入るかは、首相の求心力の回復や米国の出方がカギだ。
4日に防衛大綱の見直しを小野寺氏に指示した首相は6日の記者会見で、南西地域の防衛やミサイル防衛の強化などの課題を挙げ、「あるべき防衛力の姿はいかなるものかといった観点から不断の検討を行うことが必要だ」と語った。