土壌汚染のある豊洲市場(東京都江東区)の土地を都が578億円で購入したのは違法だとして、都民が都に対し、購入を決めた石原慎太郎・元都知事に損害賠償請求をするよう求めた住民訴訟で、都は7日、石原氏に賠償責任はないとするこれまでの方針を変えないことを明らかにした。
特集:豊洲移転問題
小池百合子都知事の指示で、都は石原氏の責任について再検討していたが、当初の方針と同じ結論になった。原告弁護団によると、同日午前に東京地裁であった原告側と都側の協議で都の弁護団が明らかにした。
訴状によると、訴訟は2012年5月に約40人の都民らが同地裁に起こした。東京ガスなどの所有地だった豊洲市場用地の購入について「都が土壌汚染対策費を考慮せずに578億円で購入したのは、(行政経費の節減を定めた)地方自治法などに違反している」などとして、都に対して石原氏に購入金額の全額を請求するよう求めている。
都は当初、石原氏の決定に「違法性はない」などと主張していたが、小池氏が今年1月、「用地購入経過が不透明かつ不適正と指摘されており、事実関係を明らかにすることが都政改革に不可欠」などとして再検討する意向を示していた。
これを受けて都は、弁護団を選び直し、土地購入の経緯や石原氏の賠償責任について調査。当初は4月下旬までに再検討結果を示す予定だったが、関連書類の分析などに時間がかかり、先送りされてきた。
豊洲市場の用地購入費は、都が東ガスから578億円で買った部分を含め、計1859億円。土壌汚染対策費約860億円などと合わせた総事業費は約5900億円に上った。小池氏は昨年11月の予定だった築地市場の豊洲移転を延期した後、今年6月に移転を進める方針を示した。