ニホンカワウソの剝製(はくせい)
長崎県対馬にカワウソがいたのを、琉球大学などのグループが今年2月、確認し、17日映像を公開した。国内に生息していたニホンカワウソは絶滅したとされており、今回見つかったカワウソがどの種かは確認できていない。グループは対馬で生き残っていた可能性とともに韓国沿岸に生息するユーラシアカワウソが流れついた可能性もあるとみて調査する。生きている状態でカワウソが見つかったのは38年ぶりだという。
映像を公開した伊沢雅子・琉球大教授によると、ツシマヤマネコの生態調査のために設置した自動撮影装置が1匹のカワウソが歩いているのを撮影した。映像は数秒。具体的な場所は公表しなかった。
現在はどこにいるかわからないという。
環境省は17日、対馬で7月以降に追加調査を行った際に、カワウソのフンを発見し、DNAを調べたところ、ユーラシアカワウソのものだと判定されたと発表した。琉球大学が撮影した個体かどうかは不明だが、今後さらにサンプルを探すなどして、詳しく調べるという。
ニホンカワウソはかつて北海道、本州、四国、九州の沿岸や河川に生息していたが、毛皮目当ての乱獲や水質汚染で激減。高知県で1979年に姿が見られ、写真が撮影されたのが、公式の最後の確認となった。
環境省は2012年、ニホンカワウソの二つの亜種(北海道亜種と本州以南亜種)をともに絶滅種とした。だが、その後も、「目撃」情報は続いてきた。
国内の水族館やペットとして飼育されているカワウソは、ユーラシア大陸に広く分布するユーラシアカワウソや東南アジア原産のコツメカワウソ。ニホンカワウソはユーラシアカワウソの亜種とする説と日本固有種とする説がある。(神田明美、小坪遊)
〈森林総合研究所九州支所の安田雅俊・森林動物研究グループ長の話〉 太い尾、短い脚や全体のプロポーションから見て、映像はカワウソ以外の何ものでもない。特別天然記念物なので、今後は環境省と文化庁が協力して、公的な調査や発見場所への立ち入り制限、密猟の防止などの対応を取ることが大切だ。
【日本のカワウソをめぐる経緯】
1965年 国の特別天然記念物に指定
79年 高知県で最後のニホンカワウソの生息を確認
89年 環境庁(当時)が絶滅危惧種に指定
北海道旭川市で死体が見つかるが、調査で飼育されていたユーラシアカワウソと判明
2012年 環境省はニホンカワウソを絶滅種と公表
17年 長崎県対馬でカワウソが見つかる