北極圏のグリーンランド北部で、12カ国が共同で取り組む研究プロジェクトが続いている。深さ2500メートルまで氷を掘り、そこに閉じ込められた気候変動の記録を読み解くのが狙いだ。急速に氷がとけ、流出が止まらない要因とともに、温暖化が進んだ「地球の未来」を探ろうとする試み。今夏、その現場を訪れた。(中山由美)
グリーンランド南西の町カンガルースアックから米軍輸送機で3時間弱。北緯75度、どこまでも氷だけが広がる世界に、黒く大きな球体がぽつんと立っていた。
国際プロジェクト「EGRIP」の拠点だ。球体は移動式の基地。標高2700メートルのこの場所で、日本やデンマーク、米独仏、スイス、ノルウェーなどが共同で氷を掘っている。
深さ700メートル以上になる氷の穴に下げられたワイヤが、ぐるぐると巻き上げられてきた。ワイヤの先には円筒形のドリル。その中から直径約10センチ、長さ約2メートルの氷が出てきた。この作業を繰り返して、掘り進めていく。
「ドリルを1回下げて、上げるまでに数時間かかる。深くなるほど長くかかり、難しくなる」とドリラーの宮原盛厚(もりひろ)さん(53)。北極で約10回、南極でも3回氷を掘ってきたエキスパートだ。
グリーンランドと南極を覆う氷は、雪が降り積もってできた。中には大気や海からの塩分、火山灰など様々な物質が閉じ込められていて、分析すれば過去の気候や環境の変化が分かる。深さ3千メートルの氷を掘り、これまでに南極では約80万年前、グリーンランドでは約13万年前までさかのぼることができた。
EGRIPでは深さ約2500…