市立幼稚園では来年度の園児を募集中。多くの世帯にとって、保育料が大幅値上げとなる=静岡県焼津市宗高の市立静浜幼稚園
静岡県焼津市立幼稚園の保育料が来年度から、ほとんどの世帯で値上がりし、4割は一気に2倍以上になる。市は9月から、認可保育園の保育料減免を拡大したばかり。母親らは「幼稚園は少子化対策の対象外なの?」と疑問を募らせている。
保育料改定は、2015年に始まった子ども・子育て支援新制度に基づくもの。新制度では公立と私立幼稚園の保育料が一本化され、所得に応じて3段階に設定される。多くの自治体で15年度に値上げされたが、焼津市は周知徹底の期間が必要として、今年度まで市立幼稚園の保育料を生活保護世帯や市民税非課税世帯を除き、一律月7千円に設定していた。
それが、来年度から市民税の所得割が7万7100円以下(標準世帯で課税所得360万円以下)で月1万円、7万7101~21万1200円(同360万~680万円)で月1万5千円、21万1201円以上(同680万円以上)だと月1万9千円に跳ね上がる。市の試算では、全体の26・5%が1万5千円、13・7%が1万9千円に上がる見込み。
第1子が小3以下の場合、第2子の保育料は半額、第3子の保育料はゼロになるが、第2子で半額になっても7500~9500円と、今年度より値上がりになる世帯も全体の32・9%にのぼる。
市立静浜幼稚園に次男(4)を通わせている母親(40)は、「長男は小4で第2子減免が使えない中、一気に1万5千円に上がったら、私が働きに出ないと払えない」と嘆く。次男は「友達がいるから、保育所に転園したくない」と言う。2歳の三男もいて、就労は困難だ。「なぜ、来年度からなんでしょう」
市立さつき幼稚園に長男(5)が通う母親(34)も、「公立幼稚園は安いのが魅力なのに、なぜこんなに上がるのか疑問。少子化対策に逆行しているのでは?」と話す。
市は子育て支援策として9月から、保育所保育料について、これまで就学前としていた第1子の年齢や所得による制限を外し、すべてのケースで第2子半額、第3子無料とする減免措置を始めた。
一方、市立幼稚園の第1子には「小3以下」という制限が残ったままだ。市保育・幼稚園課の増田洋一課長は「保育料の値上げ自体は国の施策に伴うものでやむを得ないが、せめて第1子の年齢制限は来年度から外す方向で検討したい」と話した。
市立幼稚園は7園あるが、少子化の影響で入園者が定員の6割に満たない状況が続いている。だが、市は待機児童対策で、0~2歳のみを対象とする「小規模保育所」の設置を進めており、「その卒園後の受け皿としても市立幼稚園は必要」と当面、統廃合しない考えを示した。また、民営化についても「規模が小さすぎて、民営になじまない」と否定した。(阿久沢悦子)