放課後のプログラミング教室に通う女子中高生たち。女の子同士でグループを作った方が、打ち解けやすいと主催者は話す=東京都港区のライフイズテック社
「理工系女子」を育てようと、企業や大学、政府も動き出している。「リケジョ」と呼んで特別視するのはもうやめよう。科学技術立国ニッポンの復活の鍵を握るのは、女子中高生たちかもしれない。
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山脇学園高校(東京都)2年の女子生徒5人は昨年、模型ロケットの開発に取り組んだ。ロケットは高さ約30センチで、火薬エンジンを使って飛ばす。エンジン以外の胴体や羽根、胴体に入れるパラシュートまでを素材から考えた。試作したロケットは30機を超える。「理工系女子」育成のためのプログラム「Girls’ Rocketry Challenge」の一環だ。
日本モデルロケット協会主催の全国大会をめざすこのプログラムは、同協会と米航空機メーカーのロッキード・マーティンが主催。第1回の昨年は都内3校の女子中高生が参加した。
山脇学園の5人が初めにロケットの胴体に選んだのは、「マーブルチョコ」の筒型容器。大きさはぴったりだが、重くて高く飛ばず、色んな素材を試した。パラシュートの素材も何種類も試し、最後は防災用の薄いアルミのシートを選んだ。
今年5月、茨城県の筑波宇宙センターであった全国大会で、山脇学園チームは高度を競う部門で高さ約33メートル。上位進出はできなかった。それでも、最初の機体より重さで10グラム近くも軽くできた。
将来、生物の研究をしたいというメンバーの赤田晴香さん(16)は、モノを一から作ることに興味があって参加した。「仮説を立てて失敗をしながら学べた。打ち上げたときは達成感があった」と笑う。「試行錯誤した経験は今後、生きると思う」
同社がこの企画に乗り出した背景には、理工系に進む女性が少ない現状がある。男女共同参画白書によると、大学の理学部の学生に占める女性の割合は27%で、工学部は14%。女性研究者の割合は15・3%と、英国や米国の半分以下だ。
特に女性が少ない分野は科学、技術、工学、数学の英語の頭文字から「STEM(ステム)」と呼ばれる。日本ロッキード・マーティンのチャック・ジョーンズ社長は「日本の技術レベルは世界最先端だが、他国と比べてSTEM分野に進む人の男女比に不均衡がある。女子学生にこの分野に興味を持ってもらえるきっかけになれば」と狙いを話す。
今年10月から、新たな3校がロケット作りに挑む。
■プログラミング教室も活況
IT技術者に占める女性の割合は13%(情報サービス産業協会が調べたJISA基本調査)。プログラミングは男の世界というイメージも根強い。そんな現状を変えようと、女子向けのプログラミング教室も活況だ。IT教育会社「ライフイズテック」(東京)は2年前から、女子限定のプログラミング講座「コードガールズ」を開いている。企業などが協賛して運営費や会場を提供し、参加費は無料。毎回抽選が必要なほど応募が殺到するという。
中学生の時に参加した都内の高校1年の小飼きわみさん(15)は、「女の子だけのほうが、初心者には参加しやすい。すぐ友だちができて楽しかった」と話す。学校の授業で、米グーグル本社を紹介する動画を見て、こんなオフィスで働きたいと憧れたのがプログラミングに興味を持つきっかけだった。今は教室に毎週通い、スマホのアプリ制作に取り組む。「難しいことをやっているイメージを持たれるけど、ピアノや水泳を習うのと同じ。将来役立つとかよりも、いま楽しいから続けている」
参加者らはのちにコンテストで上位に入ったり、20代で起業したりと活躍している。大学生になって「指導者」としてコードガールズに戻ってくる女子もいる。産業振興を狙って、愛知県豊田市や広島県など、地方自治体の協賛も増えている。
「レイルズ・ガールズ・ジャパン」が12年から、各地で開いている無料のプログラミング講座には、高校生から母親世代まで幅広い年代が集まる。開催趣旨では「(圧倒的に男性が多いソフトウェア業界を)より多様性の保たれた業界にしたい」と記されている。講座をきっかけに本格的にプログラミングを学び、子育てと両立しやすい会社への転職を成功させた女性もいる。
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