10月4日のオリックス戦では「4番・投手」として出場。今季初の完封勝利を挙げた大谷。ケガに悩まされた2017年だが、最後の最後に「リアル二刀流」ができるまでになった
パ・リーグと日本シリーズの連覇を狙った日本ハムの2017年シーズンは、60勝83敗の5位で終わった。開幕直後に6連敗を喫し、4月14日から26日にかけては12年ぶりの10連敗と早々に失速。勝率5割に達したのは2度だけで、4月4日以降は負け数が勝ち数を上回る「借金」生活から抜け出せなかった。
大谷、ケガと戦った1年に幕 栗山監督はポケットに塩
■2013年の流れと重なるが
日本ハムは2012年、就任初年度だった栗山監督のもとリーグ優勝を果たし、翌13年のシーズンは最下位。歓喜から屈辱への流れは当時と重なるが、栗山監督は「13年はチームを作り直さなきゃいけないときだった。今回は優勝を狙いに行って、この成績。責任は俺にある」と悔しさを隠さない。
昨季のチーム打率が2割6分6厘だったのに対し、今季は2割4分2厘。総得点は619点から509点に激減した。特に中田は不調から抜け出せず、16本塁打にとどまり、12年から続けていた20本塁打以上が途切れた。チーム防御率は昨季の3・06から3・82へ悪化。昨季は4人いた2桁勝利投手も、今季は有原の10勝(13敗)だけと、投打がまったくかみ合わなかった。
■けが人続出の誤算
最大の誤算は、けが人の多さだ。大谷は昨秋に右足首を痛めた影響で打者出場に絞って開幕を迎え、4月7日まで打率4割2分3厘、2本塁打と絶好調。しかし、8日に左太もも裏の肉離れを発症すると、6月22日までの長期離脱となった。投手復帰も7月12日までずれ込んだ。遊撃・中島は5月に左かかと、8月に右脇腹を痛めて2軍へ。4割を超える打率を維持していた近藤も、椎間板(ついかんばん)ヘルニアの手術で6月にチームを離れた。
栗山監督がチームの根幹と位置づける先発投手陣は、大谷の故障と増井のクローザー復帰で、一気に柱が2人抜けた。有原、高梨、加藤も昨季に比べ精彩を欠き、先発投手の指標となるクオリティースタート(6回以上を投げ、自責点3以下)率は、パ・リーグで最も低い38・5%。少ない得点を守り、強固な救援陣へとつなぐ勝ちパターンへと持ち込めなかった。
■期待抱かせる大田、松本、上沢
下位にあえいだチームにあって、数少ない光明が巨人から移籍の大田だ。大器と期待されながら、巨人時代は出場機会に恵まれず、8年間で通算9本塁打、100安打。今季は15本塁打、110安打と、過去の成績を1年で上回った。松本は6年目で初めて規定打席に到達。同じく6年目の右腕、上沢は右ひじ手術からの復活を果たした。
栗山監督の7季目が確実な来季は、チームの形が大きく変わる。大リーグ挑戦の意思を固めている大谷はもとより、4番の中田、選手会長で捕手の大野、10年連続50試合登板を達成した宮西、クローザーの増井がフリーエージェント(FA)で流出する可能性がある。中田は、「いろんな話を聞いてみたい」と行使を示唆している。(山下弘展)