11月の営業再開を目指す世安湯の坂崎友治さん=8日午後1時4分、熊本市中央区世安町、小宮路勝撮影
熊本地震で損壊した熊本市中央区の銭湯、世安(よやす)湯が近く営業を再開する。14日で地震から1年半。3代目夫婦は修復で大きな借金を背負ったが、地震を通して見つめ直した「銭湯の力」を信じ、一歩を踏み出す。
JR熊本駅から南東に約1キロ。住宅地に世安湯はある。真新しい浴槽に12日、地震以来初めて水が張られた。11月の再開に向けた試運転だ。「ようやくここまできました」。経営する坂崎友治さん(54)が、いつも柔らかな表情をさらに崩した。
1930年創業。高さ12メートルのれんが煙突は当時、見物人が来るほど目立ち、地下水をまきで沸かす湯は長く地元で親しまれてきた。
友治さんは2014年春、東京の会社を辞めて帰郷し銭湯を継いだ。だが県内の一般公衆浴場は1970年の300軒が18軒に激減し、祖父の代に1日300人を数えた客は、多い日でも20人ほどに落ち込んでいた。
採算ラインは1日150人と言われる。廃業も選択肢にあったが、「楽じゃない方が面白い」と攻めに出た。熊本県公衆浴場業生活衛生同業組合加盟の銭湯を紹介するウェブサイトを立ち上げ、銭湯マップをつくり、新たなファン獲得を狙った。地震が起きたのは、旅行者や会社帰りの人など新たな客が少しずつ増えていた矢先だった。
昨年4月、未明の激しい揺れで…