生活保護費と保護率の推移
給付水準の切り下げが進む生活保護。生存権の侵害を訴える受給者による訴訟が相次ぐ。一方で必要な人に保護が行き届かない現状もある。10年前、制度の運用のあり方が問われた北九州市では、適正な保護について選挙戦での議論を求める声があがる。
生活保護基準改定は違憲・違法なものであり、原告らに憲法上保障された生存権を侵害するもの――。
生活保護費の減額措置の取り消しを求め、受給者が各地で国を訴えた訴訟。原告は29都道府県の約900人に及ぶ。
国は2013年度からの3年間で、保護費の生活費部分(生活扶助)を段階的に引き下げた。一般の低所得世帯との均衡を図るなどとしている。戦後初の大幅な減額は、1人あたり平均6・5%。670億円規模に上る。
北九州市小倉南区の女性(45)も福岡地裁の原告に名を連ねる。市営住宅に3世代で暮らし、7年前から生活保護を受けている。
不自由ない暮らしだったが離婚後に心身を病み、3人の子を連れて母(63)と同居。自分も障害年金を受ける母も思うように働けない。「子どもを夫に渡して死のうか」とまで思い詰め、生活保護を申請した。
障害年金が所得とみなされ支給額が抑えられていたが、生活扶助は年齢や世帯構成などに応じて決められた額が減額され、15万円ほどだった保護費は3万円以上減った。
一家はガス代を節約して冬場でも冷めた湯につかる。家族の服は、ほとんどもらい物。家電の買い替えや子どもの入学金など、まとまった支出は食費を切り詰めてまかなう。「人間らしい生活をさせてほしい。その思いで原告になった」
生活扶助は引き下げられたが、…