KDDIが5月に開いた夏モデルの発表会。その後導入した新料金プランは月額料金を最大3割下げた=東京都内
総務省は、電話番号を変えずに携帯会社を乗り換えられる「モバイルナンバーポータビリティー(MNP)」制度の2016年度の利用数が、前年度比24・5%減の468万件だったと発表した。12~15年度を下回る水準で、16年4月に総務省が「実質0円」といった端末の安売りを規制した影響とみられる。
MNPは利用者の利便性を高めるため、総務省が導入を決め、06年10月にスタート。iPhone(アイフォーン)の投入が遅れたNTTドコモからの他社への顧客流出もあり、13年度には利用数が657万件に達した。同年9月にドコモがiPhoneを売り出したことで14年度は517万件にやや減少。その後、格安SIM各社の成長などもあり、15年度は620万件と再び増加に転じていた。
携帯大手各社は他社から客を獲得しようと、MNPによる乗り換え客を優遇してきた。競争が過熱し、端末代が実質0円になったり、キャッシュバックで利用者が現金を得たりする例もあったことから、総務省は「頻繁に携帯会社を乗り換える一部の利用者だけに利益がある」として16年4月以降、端末の極端な値引きを禁止。自らの政策で招いた過剰な競争にブレーキをかけた形だ。
総務省は大手3社に対し、MNP競争に使っていた費用を一般利用者向けの料金値下げに回すよう求めている。KDDIが今年7月、月額料金を最大3割下げるプランを始めるなど料金値下げの動きは広がりつつあり、高市早苗前総務相は「総務省が市場競争を加速させてきた成果が現れてきた」と自賛した。
ただ、値引きが制限されたことで端末の販売は減少しており、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「国内の端末メーカーは全滅してきている」と指摘。KDDI幹部は「MNPの失速で、ドコモが最大のシェアを握る現在の状況が固定化してしまう」と懸念する。(上栗崇)