強制わいせつ罪の成立に「性欲を満たす意図」が必要かが争われた刑事裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は18日、検察、弁護側双方の意見を聞く弁論を開いた。最高裁は年内にも判断を示す見通し。大法廷は判例変更などの場合に開かれており、「意図が必要」としてきた最高裁判例が変更される可能性がある。
一、二審判決によると、山梨県内の無職の男性被告(40)は2015年、13歳未満の少女にわいせつな行為をしてスマートフォンで撮影したとして、強制わいせつ罪で起訴された。
同罪をめぐっては、最高裁が1970年、報復目的で女性を裸にして写真を撮影した事件で「強制わいせつ罪の成立には、性欲を満足させる意図が必要」とし、同罪は成立しないと判断した。弁護側はこの判例を踏まえ、「知人から金を借りる条件として撮影を要求された。性的意図はない」と無罪を訴えた。
この日の弁論で、弁護側は「性的な意図が不要になれば、医療行為や育児、介護行為も処罰対象になりかねない」と述べ、判例を変更する必要はないと主張した。一方、検察側は上告を棄却するよう求めた。
16年3月の一審・神戸地裁判決は、性欲を満たす意図がなくても「被害者の性的自由が侵され、被告がそれを認識していれば、罪は成立する。判例は相当でない」として罪の成立を認め、実刑を言い渡した。同年10月の二審・大阪高裁判決も「判例の判断基準を現時点で維持するのは相当ではない」として、一審判決を支持したため、弁護側は「判例違反だ」として上告した。(岡本玄)