菜の花畑の中を走る里山トロッコ列車=市原市
千葉県市原市などを走るローカル線の小湊鉄道(本社・同市)が、日本デザイン振興会主催の今年度の「グッドデザイン賞」に選ばれた。のどかな沿線の里山風景と融和する駅や、鉄道そのもののあり方が「地域と一体に歩もうとするデザイン」と評価された。
“テツ”の広場
今年創立100周年を迎えた小湊鉄道。五井駅(同市)―上総中野駅(大多喜町)間の39・1キロを、クリーム色と赤色のツートンカラーのディーゼルカーが走る。沿線には昔のままの駅舎が良好な状態で保存されていて、今年5月、小湊鉄道に関する建造物22件が国の登録有形文化財に登録された。
2015年秋に導入した「里山トロッコ列車」は自然の中を時速30キロでゆっくり走り、人気を集める。沿線随一の観光地の玄関口である養老渓谷駅では現在、駅前広場に木を植えるなどして自然に戻す「逆開発」事業を進めている。
この10年ほどは沿線の地域住民も一緒になって、線路沿いのやぶを刈ったり、菜の花の種をまいたりして、里山の自然や景観を維持している。「沿線の里人有志と協働し、地域の里おこし活動を行っている」という。
今回のグッドデザイン賞の審査では、こうした様々な取り組みが「地域の逆開発に向けて駅や鉄道そのものを簡素にしながら、地域と一体に歩もうとする」「沿線住民自らが、暮らしの中にある鉄道の風景の質を高めていこうとするデザイン思想が優れている」と評価された。
小湊鉄道の黒川雄次・鉄道部長は「これからもこの地で走り続けるために、新たな里おこしを続けていきたい」と話す。(石平道典)