ワイン醸造用ブドウの収穫作業=9月24日、愛媛県今治市の大三島、上田幸一撮影
愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ瀬戸内しまなみ海道の島々が、果物で島おこしに取り組んでいる。今治・大三島(おおみしま)では今秋、ワイン醸造用のブドウを初めて本格的に収穫。尾道市の生口島(いくちじま)は「レモンの島」、因島(いんのしま)は「ハッサク発祥の地」で知られ、まるで「フルーツ海道」だ。13日から始まる「第17回瀬戸内しまなみ海道スリーデーマーチ」で歩いてみてはいかが。
大三島の南岸斜面では2年前から、ワイン醸造用のブドウが栽培されている。栽培会社の社長は世界的建築家の伊東豊雄さん(76)。豊かな自然にほれこみ、2011年に「伊東豊雄建築ミュージアム」を島に開いた。ワイン好きの伊東さんは島の新産業を育てようとワイナリーも構想し、15年に会社を創設した。栽培担当の川田佑輔さん(32)は、山梨大学のワイン科学特別コースで醸造を学び、ソムリエの資格も持つ。伊東さんに誘われ、「ワインをつくってみたい」と移住した。
現在は計80アールで「ベリーA」など3種を栽培。昨秋はイノシシにほとんど食べられたが、今年は糖度、酸味とも最適で、約250キロを収穫。岡山の醸造会社に出し、約200本の赤ワインができる見込みだ。3年後には自家醸造で年1万本の出荷を目指す。商品名は「大三島ルージュ」の予定で、川田さんは「瀬戸内の静かな海を思わせる、ゆったりした膨らみのある味を実現したい」と意気込む。
尾道市の生口島は「レモンの島」で、12月以降に収穫が始まるネーブルオレンジも特産だ。今は香りがさわやかな秋のグリーンレモンが実る。春にかけて黄色く色づき、まろやかになる。隣の高根島(こうねしま)も柑橘(かんきつ)栽培が盛んで、両島を結ぶ橋はオレンジ色だ。
酒造大手の宝酒造(京都市)は昨夏から缶チューハイ「産地の恵み 瀬戸田レモン」を販売し、今月からは尾道産ネーブルの果汁を使った缶チューハイも発売した。同社は「レモンから始まったご縁がつながった」と説明する。
JA三原せとだ柑橘販売課の担当者は「春先にかけて様々な柑橘が直売所などに並ぶ。いろんな旬の味を試してほしい」と話している。(直井政夫、北村哲朗)