インドネシアの憲法裁判所は7日、公的身分証の宗教欄に、イスラム教など政府公認の宗教しか記載できないのは違憲だとする判断を下した。現在は非公認宗教は記載を認められておらず、非公認派の市民らが「不当に差別されている」と訴えていた。憲法裁の判断を受けた政府の対応が注目されている。
同国憲法は信仰の自由を認めている。ただ一方で、同国政府はイスラム教、キリスト教(プロテスタント、カトリック)、ヒンドゥー教、仏教、儒教だけを公認宗教に指定。自分がどの宗教を信仰しているかを示す、公的身分証の宗教欄には公認宗教のみ記載を認めてきた。
同国には、伝統信仰など非公認宗教を信奉する国民も100万人以上いる。信仰を偽って公認宗教の信者として住民登録しない限り、宗教欄が空欄となり、結婚登録や教育費援助などの公的サービスを受けられないという。
憲法裁の裁判官はこの日、公認宗教ではない国民については、「宗教欄には『信者』と記載すればよい」との判断を示した。
同国は人口2億5千万人の約9割がイスラム教徒だが、宗教および民族的に多様な社会でもあり、国家としての調和を保つ穏健さや寛容さを国是としてきた。
だが、今春のジャカルタ特別州知事選で、少数派の中華系キリスト教徒の前知事が「イスラム教を侮辱する発言をした」と批判を浴びて落選。宗教冒瀆(ぼうとく)罪でも有罪となるなど、非寛容な動きも目立っている。(ジャカルタ=古谷祐伸)