テッポウユリの農家を訪問した天皇、皇后両陛下=18日午前10時22分、鹿児島県知名町赤嶺、迫和義撮影
鹿児島・奄美群島に滞在中の天皇、皇后両陛下は18日午前、沖永良部島で盛んに栽培されているテッポウユリの農家を視察した。テッポウユリは、2012年早春の1度目の訪問計画が天皇陛下の体調などの理由で中止された際、島民が「お見舞いを兼ねて」と宮内庁に送った花だ。
皇室とっておき
両陛下が足を運んだのは島西部の知名町で、テッポウユリとサトウキビを育てている平秀徳(たいらひでのり)さん(65)のビニールハウス。平さんは、両陛下の1度目の訪問計画が天皇陛下の心臓バイパス手術などで取りやめになった後、「せめて島のユリの花だけでも見て頂きたい」と切り花30本を皇居・宮内庁に送った。同庁からは無事届いたという報告とともに、梱包(こんぽう)を開封する職員の写真が送られてきたという。
島にとってテッポウユリは、明治以降、英国などに球根を輸出し、島の経済を潤してきた大切な花。第2次世界大戦中は「敵国への輸出品」として栽培を禁じられたが、島民がひそかに栽培を続け、戦後はより単価が高い切り花も出荷するようになった。同島産のユリは「えらぶゆり」のブランド名でも知られる。皇太子ご夫妻時代の両陛下が1968年に奄美大島を訪れた際の新聞記事には、皇后さまが「えらぶゆりはきれいですね」と語ったと記されている。
この日、実際にユリの栽培現場を訪れた両陛下は、平さんに「以前に送って頂いて」「どうもありがとう」と伝えた。天皇陛下は球根にも関心を示し、皇后さまは花に顔を近づけて香りを確かめた。平さんは取材に「えらぶゆりは島の宝。実際に見てもらえてありがたい」と語った。(中田絢子)