避難所でひざをついて被災者を励ます天皇、皇后両陛下=1993年7月、北海道奥尻町、朝日新聞社撮影
てんでんこ 皇室と震災・第3部11
北海道南西沖地震から16日目の1993年7月27日、奥尻島・青苗地区。津波と火災になめ尽くされ、家の残骸やつぶれた車などが広がる現場に、天皇、皇后両陛下が現れた。
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「両陛下は危険覚悟で島に来る」奥尻の職員は吹っ切れた
「いまだに一人も見つかっていません」。親類の一家7人が行方不明という女性の言葉に天皇陛下は絶句した。皇后さまは子どもらの肩を抱くようにして「大丈夫でしたか。お友だちのためにも頑張って」と話しかけた。
奥尻空港で被害状況の説明を受けた両陛下は車で青苗地区に向かう途中、空港近くの仮設住宅に立ち寄った。皇后さまは「ご苦労さまです。工事をされている方ですか。頑張って下さい」と励ました。
移動中、特別養護老人ホーム「おくしり荘」の前で出迎えた車いすなどのお年寄りを見つけると両陛下は車から降り、芝生を横切って歩み寄り、声をかけた。同行職員が「そろそろ時間です」と声をかけたが、皇后さまは「大丈夫ですか」と一人一人を励ました。
避難所の青苗中学校体育館(当時)で天皇陛下はひざをつき、「どうぞ元気で」などと声をかけた。震災後、対岸の江差町内の檜山支庁(当時)から奥尻町役場に応援に入り、体育館の外から様子を見守った渡部和正(わたなべかずまさ)さん(69)は衝撃を受けた。天皇陛下はそんなことをするもんじゃないと思っていたからだ。
「天皇陛下をひざまずかせると…