過去に問題になった美術表現の展示
星条旗の図柄を用い、「落米(らくべい)のおそれあり」と米軍機の墜落に注意を促す――。沖縄県うるま市のアートイベントで、美術家の岡本光博さん(49)=京都市=が商店のシャッターに描いた作品に反対意見が出て、市が公開を取りやめた。政治的なテーマの美術表現を地域社会の中でどう扱うか。問題が浮かび上がった。
特集:沖縄はいま
自治会「人を呼びたいのに…」
那覇から車で約90分。人口265人の伊計(いけい)島で日用品や食品が買える唯一の商店という「共同スーパー」のシャッターに、岡本さんが描いた作品があった。
17日、絵は市の判断でベニヤ板などで覆われた。スーパーを所有・運営するのは伊計自治会で、自治会長の男性(60)は「誰もが素晴らしいと感動する絵ではなく、政治的な主張をする作品」と憤る。
市の担当者は「『消して欲しい』という自治会の強い要望に沿って対応する」。イベントは過疎が進む島嶼(とうしょ)部の活性化が目的で、運営費は国の沖縄振興特別推進交付金を充てる。地域の協力が前提といい、担当者は、国に問題だと指摘される恐れも懸念する。
自治会は人口が減り赤字が続くスーパーの改革を模索中だが、「人を呼びたいのに逆行してしまう」と、改革に関わる人から反対意見が出たという。
1月、普天間飛行場所属の米軍ヘリコプターが島の農道に不時着した。「我々は抗議したが、それとは別問題」と会長。「基地問題には様々な意見がある。政治と切り離した作品がふさわしい。イベントは活性化を目指すもので、作家のためのものじゃない」
一方、岡本さんは「島の現状を映す注意看板だ」とし、基地問題への主張は込めていないとする。「こうしたイベントでは政治や社会的課題を扱う作品は求められず、アートの都合の良い面だけを利用しようとしているのではと感じる」。制作中の島民からの反応は好意的で、「オスプレイを描き加えれば?」とも言われた。「これを機に、議論が起こればいい」
事務局を務める市観光物産協会…