薬の神様を詣でる年に一度のお祭りに近年、異変が起きている。製薬会社トップらの足が遠のいた代わりに、年々増えているのはゆるキャラたち――。謎のにぎわいの背景にいったい何が。
正露丸くん・風神さん…
ラッパのメロディーのテレビCMで知られる大幸薬品の「正露丸くん」に、カイゲンファーマの「カイゲンの風神さん」、小林製薬の「熱さまくん」――。製薬会社の本社や支店が軒を連ねる大阪市中央区道修町(どしょうまち)で22日始まった「神農祭(しんのうさい)」には、製薬会社などのゆるキャラが集まった。今年は昨年より2体多い16体。くす玉で飾られ、露店が並ぶ通りを練り歩いた。
神農祭は町内にある「少彦名(すくなひこな)神社」で年に一度開かれる例大祭。神社では神事があり、境内は厄よけの「張子(はりこ)の虎」を買い求める参拝者でにぎわった。
神社は1780(安永9)年に町の薬種商が薬の安全を祈願して建てたのが始まりで、中国と日本の医薬の神様をまつっている。
東京移転の会社続々
だが、2000年代以降、関西経済の地盤沈下とともに道修町の空洞化も進んだ。国内最大手の武田薬品工業は本社こそ残すが、社長や取締役は普段は東京にいる。旧藤沢薬品工業(現アステラス製薬)が合併で東京に移ったほか、取引先の多さなどから東京に軸足を移した製薬会社も目立つ。神社を支える「薬祖講(やくそこう)」には、製薬会社や化学メーカーなどは約250社が入っているが、別所賢一宮司は「最盛期の半分ほどになった」と語る。
この神農祭にゆるキャラが登場したのは2013年。背景には町の変化もあった。
周辺にマンションが建ち、道修…