(中西哲生コラム)世界との差、開いたと実感——贯通日本资讯频道
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(中西哲生コラム)世界との差、開いたと実感

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スポーツジャーナリストの中西哲生さん


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今月のサッカー日本代表の欧州遠征からは、いくつかの課題が見えました。一つはビデオアシスタントレフェリーの導入への対応です。


10日のブラジル戦は、前半10分にPKで失点するまでは臆することなく、アグレッシブに臨み、悪くない入りでした。それが6分23秒のCKの場面でPKをとられました。ビデオアシスタントレフェリーの指摘で映像を見た結果、吉田がフェルナンジーニョを倒していたという判定となったのです。この制度は、来年のW杯でも採用される可能性が高いでしょうから、まず対応の必要性を認識しなければなりません。


この時、ペナルティーエリア内でブラジルが行ったプレーは、バスケットボールのスクリーンプレーとほぼ同じです。選手が味方の近くを通ることで、自分をマークしている相手ディフェンダーを味方にブロックさせる形にして、マークをはがすという方法です。それによって吉田が、自分をブロックする形になったフェルナンジーニョを手を使って倒しました。進路を妨害された形の吉田はかなり主審に食い下がりましたが、フェルナンジーニョは手を使わずそこに立っていただけ、という主審の判断。PKの判定は仕方ないでしょう。


このスクリーンプレーはもともと、2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)の前辺りからドイツがやっていました。そして、そのW杯で、地元ブラジルをドイツが7―1と衝撃的な点差で下した準決勝の先制ゴールが、このプレーでした。それを進化させた形で、今回ブラジルはこのプレーをやってきたのです。W杯本大会であれば、取り返しのつかない失点になったところでしたが、今回は親善試合。力のあるチームがこうした緻密(ちみつ)なセットプレーをやってくる、ということを身をもって知る、いい教訓になりました。


前半36分に3失点するまで、ブラジルは「本気の本気」ではなかったかもしれませんが、少なくともハイレベルなプレーで戦ってくれました。守備において、いい角度で相手を追い込んでも、それをかいくぐってくる技術の高さやパスの正確性など、ブラジルとの明らかな差を選手たちも感じたはずです。この試合の日本代表は、比較的守備能力の高い選手をそろえましたが、それ故にボールを奪った後に収めるところがなく、再び相手に奪われて攻撃される場面が見受けられました。


乾のように、ボールを収めて時間をつくれる選手をスタメンから使うなど、奪った後にすべて速攻、といかない時にボールを落ち着かせる場所を考える必要があります。またプレスに行く、行かないというライン設定や、プレスに行く角度に関して約束事をつくるなど、個人の球際の「デュエル」ばかりでなく、チームの守備としてやるべきこともあるでしょう。


0―3から1点を返した後半は、ハリルホジッチ監督が「後半は1―0だった」という内容の話をしていましたが、もちろんサッカーの試合は、そういうものではありません。確かに後半は修正できた部分はありましたが、試合は0―0で始まります。いかに0―0の時間を長く構築できるかということを前回のこのコラムで書きましたが、0―3の後は別の要素が生まれます。しかも、ブラジルのスタメンはそもそも「1・5軍」でした。そのチームを相手に、前半で3失点というのは、決して楽観できる内容ではなく、世界との差はブラジルW杯の前より開いた、ということを実感せざるを得ない結果でした。


0―1で敗れた14日のベルギー戦は、相手のテンションの低さが特に前半は伝わってきました。そこには様々な要因がありますが、少なくともブラジル代表の前半の36分間とは違ったものがありました。それはチームのエース、つまりブラジルならネイマール、ベルギーならエデン・アザールという明らかなエースが試合に出場しているか、いないかということです。技術的な部分でも影響はありますが、これは精神的な部分にも影響します。エースが出ていれば重要な試合という認識になりますし、出ていなければテスト的な試合とチームメートは認識するからです。


前回のコラムで、10番タイプのファンタジスタが中盤に君臨する時代ではなくなり、3トップの外側に位置する方向に変わってきていると書きました。ブラジル戦をみると、最終的な大きな崩しにつながるきっかけとなるプレーをしていたのはネイマールでした。左サイドバックのマルセロとともに、少しずつ日本のディフェンスのズレをつくり、最終的にそれを味方が速いパス回しとドリブルで大きなズレにしていました。つまり、いくら守備が進化しようとも、最後のところで大きなズレをつくるきっかけとなるプレーをしているのは、ネイマールやエデン・アザールのような選手なのです。


ベルギー戦でみえた課題は、相手がドリブルでペナルティーエリアに侵入しようとしてきた時の対応です。この試合の失点は、シャドリにドリブルで3人が突破されたところからR・ルカクに決められましたが、相手がかわしに入ってきている時に、対応する1人目の角度や距離が適切でないと、相手はスピードに乗ってしまい、2人目、3人目の味方はファウルしなければ止められない状況になるので、1人目の対応はとても重要です。1人目が相手がスピードアップできず、ゴール方向やペナルティーエリアに直線的に侵入できない角度に立ち、距離を詰めることで、2人目、3人目が対応しやすくなります。


ただ、自分がかわされたくないからと、日本人選手は相手と少し距離をとりがちです。そうなると相手はスピードに乗った状態でペナルティーエリアへ侵入してきてしまいます。そうではなく、まずは相手との距離を縮めること。そうなれば相手は横に動いてDFをかわす必要性が生じますし、ペナルティーエリアから遠回りすることになります。そこで2人目、3人目が対応すれば、1人の相手に複数で守るという日本ヂカラをうまく発揮できます。


ビデオアシスタントレフェリーの導入への対応と、相手がドリブルでペナルティーエリアに侵入してきた時の対応などはW杯本大会に直結する課題。何として来年6月のロシアW杯までに対応すべきです。今からでも十分修正できます。



なかにし・てつお 1969年生まれ、名古屋市出身。同志社大から92年、Jリーグ名古屋に入団。97年に当時JFLの川崎へ移籍、主将として99年のJ1昇格の原動力に。2000年に引退後、スポーツジャーナリストとして活躍。07年から15年まで日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。このコラムでは、サッカーを中心とする様々なスポーツを取り上げ、「日本の力」を探っていきます。



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