ジンバブエのハラレで24日にあった大統領就任式で場内を行進するムナンガグワ氏(中央)=石原孝撮影
アフリカ南部ジンバブエで24日、ムナンガグワ前副大統領(75)が新しい大統領に就任した。大統領を辞任したムガベ氏(93)の任期を引き継ぎ、来夏まで暫定的に務める。経済再生や雇用創出、欧米諸国との関係改善など国民の期待は高く、新政権にかかる責任は大きい。
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ムナンガグワ氏は、首都ハラレの国立競技場で開かれた就任式に出席。6万人を超える観衆や近隣諸国の首脳らが見守る中、「経済の再生が必要だ」と演説し、汚職の減少や雇用創出、他国からの投資の拡大を目指すと表明した。欧米諸国に経済制裁の解除を求めていくとも述べた。
ムナンガグワ氏は、ムガベ氏の長年の側近で、国防治安相などを歴任。軍幹部との関係は深く、今回の反乱で中心的な役割を果たしたチウェンガ司令官とは盟友関係にあるという。冷酷さや政治生命の長さなどから「クロコダイル(ワニ)」とも呼ばれる。
ムガベ氏の後継者として有力視されてきたが、ムガベ氏は今月6日にムナンガグワ氏を突如解任。ムガベ氏の妻グレース氏(52)が後継の最有力候補になった。これに軍が反発し、15日未明にムガベ氏を自宅軟禁にするなど政府中枢を掌握。ムガベ氏は21日に辞任に追い込まれた。
ロイター通信などによると、軍はムガベ氏に対して、辞任と引き換えに訴追免除や自国内での安全の保証を与えたという。ムナンガグワ氏は演説で、ムガベ氏を「建国の父」とたたえた。ムガベ支持者の反発を避けたとみられる。
新大統領に国民はどう思う
ムガベ氏は独立後、37年にわたって国を率いた。24日の就任式には、国のトップをムガベ氏しか知らなかった若者も多く駆けつけた。
大学院で経済学を学んでいるというタニア・マクバーザさん(25)は、友人2人と会場に来た。国旗を振りながら「新しい時代が来た。ここに来るべきだと思った。とても興奮している」と満面に笑みを浮かべた。「腐敗がなくなり、国民の思いや考えが自由に表現できる平和な国になってほしい」と訴えた。
ジンバブエはムガベ政権の失政などで2000年代に財政が破綻(はたん)。欧米諸国との関係が悪化し、08年にインフレ率が一時、2億3千万%以上になり、失業率も数十%に上ると言われる。
大学で会計学を学ぶルチョカ・チコラさん(22)は「ホームレスを少なくして、雇用が増えて、民主化を進めて……。期待したいことがたくさんある」と笑った。辞任したムガベ氏については「彼の功績や年齢を考えると、訴追しない方が国のためになると思う」と話した。
一方、就任に懸念を示す声もある。ムナンガグワ氏が、過去に政府に反対する市民らの弾圧に関わったと指摘されているからだ。無職の男性(25)は「彼はずっとムガベ氏の右腕だった。ムガベ氏よりはましかもしれないが、強権的な支配を続けるかもしれない」と不安を漏らした。(ハラレ=石原孝)