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「8時だヨ!全員集合」展 情報提供求む!!切実な理由

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1970年8月8日に旧杉並公会堂から放送された舞台のリハーサルの様子を、山田満郎さんが撮影した写真。左から荒井注さん、高木ブーさん、いかりや長介さん、加藤茶さん、仲本工事さん=東京都杉並区の区立郷土博物館分館


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バラエティー番組がひな壇芸人のなれ合いと揶揄(やゆ)され、国民的アイドルグループの元メンバーが出演したネット番組が社会的反響を呼ぶ。そんな今となっては信じがたいぐらい、かつてテレビはお茶の間の娯楽の王様だった。当時のちびっ子たちの記憶を呼び覚ます舞台美術を切り口に、最高視聴率50%超を記録したお化け番組「8時だヨ!全員集合」をフィーチャーした企画展が、東京都杉並区の区立郷土博物館分館で開かれている。


「8時だヨ!全員集合」は、ザ・ドリフターズが主役を務めたバラエティー番組。1969年10月4日から16年間、TBS系で土曜日午後8時から放送され、最高視聴率は50.5%を記録した。緻密(ちみつ)に計算された台本によるコントやアイドル歌手ら多彩なゲストのパフォーマンスのほか、志村けんさんの「東村山音頭」など、番組発のヒットソングも話題となった。


荒井注さんの貴重なリハ写真


企画展会場の扉を開けると広がるカラフルな幾何学模様。多くの中高年世代の瞼(まぶた)の裏に焼き付いて離れない模様のはずだ。番組のオープニングやエンディング、コントの幕あいのゲスト歌手の歌唱など、バンド演奏タイムの背景に使われていたあの模様だ。写真撮影用に壁一面に広がっているだけでなく、舞台デザイナーの山田満郎さんが描いた原画も展示されている。


番組の特徴は、ほとんどが生放送だったこと。各地の公会堂や市民ホールなどでの公開収録で送られてくる生ならではの緊迫感や、ミスやトラブルも含めて笑いに変えていくメンバーの掛け合いから目が離せなかった。それを引き立てたのが舞台装置。コントの最後に崩れる家屋など、綿密に仕込まれた様々なカラクリが大きな魅力だった。


今回の企画展は、803回放送された中で唯一、旧杉並公会堂で公演された1970年8月8日放送分の舞台の設計図や写真を中心に、番組に関するこぼれ話を集めるかたちで構成されている。


設計図によると、舞台にはメンバーが通れるように3カ所の穴があけられていた。リハーサルの様子の写真には、後からドリフに加入した志村けんさんの姿はなく、脱退前の荒井注さんの姿が見られる。


惜しむべきことに、当時はまだ高価だったカラー放送用のテープは番組後には再利用されてしまい、完全な形での放送映像が残っていない。すでに半世紀近く経過しており、関係者にも物故者が多くなり、詳細が分からないことも多い。そのため、展示会場には「情報提供のご協力お願いいたします!!」と書かれた、切実さの伝わるパネルも掲げられている。2カ月間の準備期間で必死に資料を集めて回ったが、まだまだ企画展の担当者は満足していないという。


綿密なリハーサルの痕跡


杉並公会堂からの放送のものではないものの、当時の台本や録音テープ、楽譜などが企画展開始後も各所から寄せられ、展示物に追加されたという。


企画展を担当した小野正彦さん(58)の解説を聞きながら、展示内容を見て回った。


当時の番組放送までのスケジュールはこうだ。放送の前日までに舞台が設置され、当日は午前10時から2時間かけて、前半のコントのリハーサルをする。実際に舞台で立ち回ったリーダーのいかりや長介さんらが、セットの手直しを指示。1時間かけて作り直すなどの調整を重ね、午後8時からの生放送に備えたという。


興味深いと感じたのは、事前録音の時間があること。会場の広さの制約上、実際にバンドが生演奏できるのは放送中に2回ほどだったといい、それ以外の場面のBGMは、事前に録音したものを使っていた。ただ、他のスタジオで収録されたものではなく、放送当日に、その会場内でバンドメンバーが演奏して録音することがほとんどだった。会場によって音の響き方が違うことや、リハーサル中にメンバーから手直しの指示が入ることから、当日に録音しなければならなかったという。


追加展示の楽譜でも、赤色のペンで慌ただしく手直しされた様子が確認できる。ちなみにこの楽譜はセットが入れ替わる時に流れていた定番の曲で、当初は「追っ掛け」、のちに「盆回り」と名付けられた。展示されているのは、作曲家のたかしまあきひこ(高島明彦)さんが書いた貴重な原本だという。ほかにも、加藤茶さんと志村さんが付けひげ姿で踊りながら大道芸をする「ヒゲダンス」で流れる軽快な音楽、「ヒゲ」の楽譜も展示されている。こちらはたかしまさんが清書した2枚目の楽譜だという。のちに「ヒゲのテーマ」としてレコード化されヒットした。


ほかにも、毎週ごとに使い捨てる「一点もの」の舞台の設計をしていた山田さんが所有していた遺品を中心に、約100点の舞台の図面やスケッチ、大道具図面が並んでいる。


会場には、80年代の4本の傑作コントの映像も流れており、楽譜が展示されている2曲もBGM的に流れている。上書き可能な生放送録画テープという性格上、どうしても現存しにくいテレビ黄金期のアーカイブ映像。もはや日本芸能史の研究対象ともいえる貴重な品々を眺めながら、テレビの今昔に思いをはせてみるのはいかがだろう。


企画展は12月10日まで。毎週月曜日は休館。引き続き、旧杉並公会堂からの放送にまつわる情報も募っている。情報は同館企画担当者(03・3317・0841)まで。(神沢和敬)



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