日本のプレゼンターを務めた藤田千恵子さん(左)とジョアキム・ルタイシレさん=15日、パリ、佐藤恵子撮影
2025年万博の誘致をめざす日本など4カ国が今月、パリで初めてそれぞれの万博構想を披露した。日本が起用したプレゼンターは、日本が取り組む途上国支援をよく知る二人。途上国とのつながりも絡めて大阪万博をPRすることで、途上国からの支持を狙う作戦だ。思いは届くのか――。
25年万博の開催国は、来年11月の博覧会国際事務局(BIE)の総会で、加盟170カ国による投票で決まる。今月15日にパリであったBIE総会では、立候補国の日本、フランス、ロシア、アゼルバイジャンの4カ国が、加盟国の代表者に自国の万博構想を提案した。
日本の一人目のプレゼンターとして登壇した藤田千恵子さん(52)は、大阪市に本社がある日本ポリグルに勤めている。納豆の成分をもとにした水質浄化剤を使い、途上国に飲用水を普及させている会社だ。プレゼンテーションでは、自社の活動に触れながら、大阪万博の意義を訴えた。
日本の提案では、万博を通じて国連が提唱する「SDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)」の達成をめざす。SDGsは「貧困」「気候変動」などの17分野で掲げた目標のことだ。藤田さんは「私が取り組む水の活動もSDGsに通じる。現地で活動していくうちに元気をもらい、絆が生まれる。まさに、大阪万博のテーマである『共創』が体感できる」と話す。
自身は2人の子どもを持つ母親だ。「日本の子どもたちが、大阪万博でいろいろな国の文化や技術、科学を通して夢や希望を持てたら、すばらしい。その助けになればと思い、プレゼンターを引き受けました」
もう一人はルワンダ生まれのジョアキム・ルタイシレさん(35)。神戸情報大学院大学に留学し、ソフトウェアを学んだ。若手アフリカ人に日本企業でのインターンの機会を提供する日本政府の制度に応募して選ばれたこともある。いずれはルワンダに戻り、起業するという。
プレゼンテーションでは日本での経験を振り返り、「25年に大阪に集まることが楽しみ」と締めくくった。ルタイシレさんはライバル国のプレゼンテーションを聞いて、「日本の発表が一番いい」と思った。アフリカでは、生きるために汚い水を飲み、命を失う子どもたちも多い。だからこそ、「藤田さんの飲用水をつくる話のように、日本の発表は具体的でよかった」と話す。
立候補国によるプレゼンテーションは来年6月にもある。BIE加盟国は各国の発表内容を参考に、来年11月に投票先を決める。(佐藤恵子)