岩渕美克教授
政党や政治家の「カネ」の出入りを明らかにする政治資金収支報告書。30日に総務省が公表した2016年分の報告書からは、どのような課題が見えるのか。岩渕美克・日大教授(政治学)に聞いた。
自民収入241億円、4年連続で首位
特集:政治資金
――自民党の収入が4年連続で首位となり、政治資金でも「自民1強」が鮮明になりました。
「政党交付金の半分は議席数に応じて各党に配分されるので、小選挙区制のもとでは大政党に有利だ。一昨年から企業献金も完全に復活し、自民党の資金の肥大化は明らかだ。巨大与党だけが潤沢な資金を持つのは、政党政治の発展にとって健全とは言えない」
――具体的にどんな弊害がありますか。
「政党交付金は党本部から支部へも配られている。自民党は地方にも十分なお金が行き渡ることで、きちんとした地方組織を維持できる。逆に野党は地方にお金が回らず、風頼みの選挙戦にならざるを得ない。政治資金は選挙に大きな影響を及ぼす」
――企業団体献金には批判もあります。
「1995年に施行された改正政治資金規正法の付則では、政治家への企業団体献金を5年後に禁止すると定めていた。いつのまにかうやむやになってしまったが、原点に立ち戻れば、自民党は企業献金の受け取りを控えるのが筋だろう」
――財界と自民党との蜜月ぶりが際立つが、経団連は正当性を強調しています。
「大企業に有利になる政策など、何らかの見返りを求めていると思わざるを得ない。見返り求めないのなら、野党にも議席に応じて献金してもいいはずだ。官民の癒着の温床になり、大企業有利な政策がとられると思われても仕方ない」
――政治資金の仕組みは制度疲労を起こしているのでしょうか。
「政党交付金が始まって20年あまり。税金を民意に沿ってどう配分するのか議論が必要だし、企業献金も見直す時期に来ている。例えば与野党ともに企業献金を受け取ったら、その分、政党交付金を国庫に返す仕組みにしてもいいのではないか」
――政治とカネの透明性を高めるために必要なこととは何ですか。
「政党交付金は税金が原資なのに、実質的に渡しきりという性格が強く、コスト意識が働かない。使途や繰り越しの理由を、国民にもっと丁寧に説明するべきだ。企業決算のように政党も四半期ごとにちゃんと説明の場を設けてはどうか。それが自らを律するきっかけになる。税金から払われていることを、再確認する仕組みを整えるべきだ」(聞き手=平林大輔、加茂謙吾)