ミャンマーのキリスト教会や政府の関係者がホッと胸をなで下ろしている。先月末、同国を訪れたローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が少数派イスラム教徒ロヒンギャの問題に滞在中は直接言及しなかったからだ。
ミャンマーでは60万人超のロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れて、難民になった後も、「国内にロヒンギャという民族はいない」との政府や国民の主張は変わっておらず、同情の声はほとんど聞かれない。
ミャンマーのカトリック司教協議会幹部は、「法王がもし、『ロヒンギャの味方』と見られれば、国内の過激な仏教徒らが法王やキリスト教徒までを批判の対象にしかねなかった」と話す。
ミャンマー外務省幹部によると、法王は滞在中、政府関係者に「(ロヒンギャ問題で)今、断定した発言をする時期ではない。(ロヒンギャも含めた)皆のためになる訪問にしたい」と話したという。
一方、バチカン側がミャンマーで開いた記者会見では、欧米メディアから「ロヒンギャという言葉を使わなかったことで法王の権威が下がったとは思わないか」と厳しい質問がぶつけられた。
結局、法王は次の訪問先のバングラデシュでロヒンギャについて発言し、難民と面会した。欧州を拠点とするロヒンギャ支援団体幹部は取材に、「ミャンマーでは混乱を生まず、バングラデシュでは問題を国際的に発信してもらえた。配慮に感謝したい」と語った。(バンコク=染田屋竜太)