バングラデシュ南東部コックスバザール郊外の国境付近で配給を待つロヒンギャ難民たち=18日、杉本康弘撮影
バングラデシュ政府は28日、ミャンマーから逃れてきて国境地帯で避難生活を送るイスラム教徒ロヒンギャの難民を、ガンジス川河口の無人島に移住させるための予算案を決めた。この無人島はサイクロンや豪雨に見舞われることが多く、「人が住める場所ではない」との批判がある。
特集:ロヒンギャ問題
移送先は、首都ダッカの約160キロ南にあるバシャンチャール島。難民の無人島移送計画は、8月末に始まった今回の60万人超のロヒンギャ難民流入の前から、過去の迫害を逃れてバングラデシュ側に暮らしてきた難民を念頭に政府内で検討されてきた。政府は難民のミャンマー帰還までの一時的な措置としている。
地元紙によると、政府高官は約10万人を移送する方針を示した。政府は12月から島で住居や道路、水道などのインフラ整備を始め、移送は来年5月ごろに始めたい考えだという。ロヒンギャの帰還後には、バングラデシュの貧困層の居住地区にする可能性もあるという。
バングラデシュ政府の難民移送の方針は、国内世論への配慮とみられている。難民キャンプは飽和状態で、地元住民の負担や不満も高まっている。ロヒンギャが国内のイスラム過激派組織に勧誘される恐れなど治安上の懸念もある。外交関係者は「どうみても、半年で整備するのは無理だ。来年以降にある総選挙の前に対策をとっているポーズをみせなければならなかったのだろう」と話す。
難民移送が強制的になったり、移送後に島でロヒンギャが自然災害に遭ったりすれば、国際世論の批判を浴びる可能性もある。
アラム外務担当相は11月上旬、移送計画について朝日新聞の取材に「ロヒンギャを危険な目に遭わせることはない。彼らを守るための措置だ」と話していた。(ダッカ=奈良部健)