欧州連合(EU)の行政機能を担う欧州委員会は6日、財政危機に陥った加盟国を支援する「欧州通貨基金(EMF)」の設立を含むEUの改革案を発表した。改革は、欧州全体に影響をもたらしたギリシャ危機の教訓から加盟国間の経済、財政的な関係を強くするのが狙いだ。
EMFは、2012年に債務危機対応の仕組みとしてできた「欧州安定メカニズム(ESM)」を衣替えして新設する。納税者の負担を避けるため、金融機関の破綻(はたん)処理に使われる基金が枯渇した際には、資金の出し手となる。
現在のESMによる支援は原則、国際通貨基金(IMF)と緊密に協力することが求められている。このため、機動性に欠けるとの指摘があった。欧州委はEMFについて「より迅速な意思決定と、より直接的な関与が見込める」とし、加盟国の首脳でつくる欧州理事会と欧州議会に対して、19年半ばまでに提案を採用するよう求めた。
改革案には、EU経済・財政相の新設も盛り込んだ。この役職が欧州委の副委員長と、共通通貨ユーロを使う国々の財務相会合の議長を兼ねる。非ユーロ圏の国も含めて、より一体的な財政政策が実行できるようにする。
欧州委トップのユンケル委員長は「危機から数年が経ち、しっかりとした欧州経済の成長が、より強固な経済、通貨関係に前進するよう促している。屋根を直すのに、晴れている時ほどいい時はない」と述べた。(ブリュッセル=津阪直樹)