7日、新入団の記者会見で抱負を語る松本。笑顔が目立ったが、「試合中でも緊張したときほどニコニコするようにしているんです」=東京都港区のヤクルトホール
13試合22打席無安打。立大時代の松本直樹捕手(24)が、東京六大学リーグで残した打撃成績の全てだ。打率0割で卒業した選手が、2年後にプロの門をたたくことになるとは――。「周りもそうでしょうし、僕も思っていませんよ」
7日、東京都内であったヤクルトの新入団発表会見。社会人野球の西濃運輸からドラフト7位で入団した松本は、集まったファンに守備面をアピールした。「捕球してから投げる速さを見てほしいです。球団OBの古田敦也さんのように信頼される捕手になりたい」。ほとんど盗塁を許したことがないという強肩を買われてのプロ入りだ。
香川県坂出市出身。香川大教育学部付属坂出中では軟式で、四国大会準優勝の実績がある。県内屈指の進学校の丸亀高に進むと、3年夏の香川大会で準優勝。甲子園には届かなかった。勉強も手を抜かず、評定平均は4・5前後をキープ。その成績を生かし、指定校推薦で立大に進んだ。
強肩光り、社会人チームで開花
大学の同級生に東京・日大三高で夏の甲子園を制した捕手の鈴木貴弘(現JR東日本)がいた。1年春からリーグ戦に出場した鈴木に対し、ずっと引け目を感じていた。周囲のレベルの高さに気後れした松本は、思うように送球ができなくなるスランプにはまった。ようやくリーグ戦に出られたのは3年秋。卒業後も野球を続けられるとは思わなかった。一般企業の就職説明会に出席したり、地元で公務員になるための資料を取り寄せたりした。
ただし、その強肩だけは光っていた。才能を惜しんだ指導陣から、西濃運輸の練習への参加を勧められた。4年秋には鈴木と出番を分け合うまでになった。それでも安打は出なかった。
西濃運輸ではすぐに正捕手となり、1年目に都市対抗野球で4強、2年目の今季も8強進出。弱点だった打撃でも、東京ドームの左翼席中段への一発を放つなど、場数を踏むことで長打力が開花した。捕手出身のヤクルト・中西親志スカウトは「スローイングを含めた守備は社会人ナンバーワン」と評価する。
「社会人で、いい捕手というのは信頼される捕手だと分かりました。練習の時から見られている。ベンチの信頼を得るための意識も必要だと思っています」と松本。大学時代、結果が出せなかった神宮が本拠になる。「これも何かの縁。何とか打ちたい」と、まずはプロ初安打を目標に置いた。(伊藤雅哉)