インターステラ社でロケット開発に携わる金井竜一朗さん=北海道大樹町
宇宙新時代 民間の挑戦
インターネットに接続できない人口は世界で30億人とされる。数百~数千の小型衛星で通信網を整備する計画が各国で進む中、安くて小さなロケットの需要が高まっている。
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北海道大樹町の「インターステラテクノロジズ」は、「ロケットのスーパーカブ」を掲げ、格安ロケットの製品化に取り組む。作業場には旋盤などが並び、燃料噴射装置から発射台まで自作する。
来春打ち上げ予定の観測ロケット「MOMO」2号機のプロジェクトをまとめる金井竜一朗さん(30)は「自社で部品を検査できることが強み」と話す。例えば、圧力の計測センサーは性能を確認した格安の中国製。幅3メートルある工作機械を中国のネット通販で買うこともある。
中核技術には、十分実績があるものを選ぶ。燃料と酸化剤を噴射して混ぜる装置は、アポロ月着陸船にも使われた技術。簡易な構造で、サイズも変えやすい。こうした工夫で、2020年代前半に高度500キロに重さ100キロの衛星を投入できるロケットの実用化が目標だ。
競争相手は多い。米航空宇宙局(NASA)は、小型衛星の打ち上げを目指す米ロケットラボなど3社と5億~8億円の調達契約を結び、追い風を作る。ロケットラボは5月、小型ロケット「エレクトロン」を打ち上げた。予定の軌道には入らなかったが、一段目の切り離しなどに成功。年内にも2回目の打ち上げを予定している。
国内では、キヤノン電子やIHIエアロスペースなど4社が8月、小型ロケットの事業化を目指す会社を設立。事業化に向けて検討を進めている。
宇宙航空研究開発機構の最小級ロケット「SS520」も、民生部品を使って、開発と打ち上げの費用を約5億円に抑えた。量産すれば半額程度になると見込まれる。1月の打ち上げは失敗したが、月内に再打ち上げを予定している。
野村総合研究所の佐藤将史・上級コンサルタントは「小型衛星は打ち上げが増え、20年には今の倍の年間200機程度と予想できる。当面は先行する米スペースXなど技術を確立した企業が担い、3年ほど後にはベンチャーが入ってくることを期待したい」と話している。(田中誠士)