海岸で語り合う富永寛之さんと間瀬るみえさん=鹿児島県奄美市
都市部の企業や官公庁から発注される仕事を、地方にいながらインターネット経由で個人が受注する「クラウドソーシング」が広がっている。深刻な人口減を抱える市町村は、新たな働き方で移住者らを増やそうと、環境の整備や支援に力を入れている。
マングローブと青い海が広がる鹿児島県の奄美大島。富永寛之さん(31)は大阪府から6月、千キロ近く離れたこの島へ移住した。交際相手の間瀬(ませ)るみえさん(30)も8月に会社勤めをやめ、1LDKのマンションでいっしょに暮らす。
2人の職場は寝室だ。富永さんは毎日6~7時間パソコンに向かう。クラウドソーシングの大手「ランサーズ」(東京)などが運営する仲介サイトを見て、東京や大阪の飲食店、社会福祉法人などからホームページの作成を請け負う。
ホームページ制作会社に頼めば数十万円かかることが多いが、富永さんは5万円で受注。間瀬さんも企業広告などのネット記事を書き、2人で月約25万円を稼ぐ。富永さんは「数をこなさないといけないが、頑張ればそれなりの収入になる」と話す。
富永さんは東京と大阪でゲームやホームページの制作会社に勤めた。だが厳しいノルマや、せわしい都会で会社のために働くのに嫌気が差した。独立を考えている時、経験と技術を生かせるクラウドソーシングを知り、仲介サイトに登録して島への移住を決めた。
年収は4割ほど減り、物価が高い島の暮らしは楽ではない。ただ、空き時間にシュノーケリングやカヤックを楽しめる。富永さんは「ITスキルがあれば、都会と同じ仕事が地方でできる」と言い切った。
■「個人がネットで稼ぐ島」、目…