優勝したモーエン
3日に開催された第71回福岡国際マラソン選手権(朝日新聞社など主催)は、ノルウェーの無名選手ソンドレノールスタッド・モーエン(26)が2時間5分48秒の大会史上2位の好タイムで優勝した。13年連続で海外勢が勝っているが、アフリカ勢以外の優勝は59回大会のドミトロ・バラノフスキー(ウクライナ)以来となった。
モーエンは今回が4度目のマラソンで、自己記録を4分以上も縮めた。今年10月、スペインでのハーフマラソンを59分48秒で走っており、実力の片鱗(へんりん)を見せていたが、2012年ロンドン五輪金メダリストのキプロティク(ウガンダ)らを振り切っての快走を誰が予想しただろうか。
もともとクロスカントリースキーの選手だったが、2007年に陸上の欧州クロスカントリー選手権で好成績を残し、転向した。「爆走」の陰には昨年から指導を受けるイタリア人コーチ、レナト・カノーバ氏(73)の存在がある。
指導歴45年超のカノーバ氏は、最近ではマラソンの元世界記録保持者ウィルソン・キプサングや今年のロンドン世界選手権を制したジョフリー・キルイ(ともにケニア)ら数々の名選手を育てている。こうしたアフリカ勢を指導する一方で、同コーチはレース前に「もともと標高の高くない所に住む白人選手でも、アフリカ勢と戦えることを証明したい」と語っていた。
マラソン練習について同コーチは「以前は瀬古(利彦)がやっていたように週に280キロも走り込むやり方に主眼が置かれていたが、今は違う」と断言。高地トレーニングの重要性を指摘した上で「いかに高いスピードを維持して練習を積むかが重要だ」とし、距離重視の練習法を否定した。
今回のモーエンのタイムは欧州記録で、白人選手としては初の2時間5分台。今年はゲーレン・ラップ(米)がシカゴ・マラソンで優勝するなど白人選手の活躍が目立つ。同コーチは「日本選手にも世界のトップに立つ可能性はある」。大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)の好走もあり、日本勢にも少し光が差してきた。(堀川貴弘)